コントラクト・キラーのレビュー・感想・評価
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死にきれない男が依頼したのは”自分” なのに恋に落ちて生きようとする話
コントラクト・キラー
神戸新開地にあるパルシネマしんこうえんにて鑑賞 2024年1月19日
ロンドンで暮らす孤独なフランス人アンリ(ジャン=ピエール・レオ)は、長年務めた職場を解雇されてしまう。
絶望し、自殺を試みる。ロープを調達、首を吊るもののフックが外れて失敗。それならとガス中毒での自殺を図るも、今度はガス会社がストライキ。
彼はカフェで読んだ新聞である広告を目にする。
「コントラクト・キラー=殺し屋」これだ。
ギャングのアジトを訪れて自分自身の殺害を依頼する。
「消す相手は?」とボスらしき男。自分の写真を差し出すアンリ
アンリは、パブでバラ花売りのマーガレット(マージ・クラーク)に出会って恋に落ちると、生きる希望を取り戻す。
殺し屋はパブの窓の外から見ていたが見逃してやろうと後を去った。
殺し屋はガン疾患、医師から余命1~2カ月と宣告される。
マーガレットのアパートにたどり着いた二人。
事情を話せば「その酒場に戻って“殺し”のキャンセルを」とマーガレットは言う。
ある日、強盗が発生、その場にいたアンリに拳銃を渡し逃亡。アンリは犯人と疑われて、サングラスをしたアンリが新聞に掲載された。
新聞を読んだマーガレットは信じられないと落胆する。アンリはマーガレットの自宅へ戻る。
殺し屋は追いかけてくるが、マーガレットは花瓶で殺し屋を殴打し気絶させ アンリを逃がす。
ハンバーガー店でアンリは店員となっており、客として訪れたマーガレットと再会する。
ふたりは逃亡することにし、マーガレットは鉄道の切符を用意し、発車時刻をアンリに伝えた
新聞には、強盗の犯人2人逮捕、1名無罪との報。アンリの冤罪は晴れたのだ。
殺し屋は生きていたようで、追いかけていくが、とうとうアンリは見つかってしまうのだった。
殺し屋は拳銃を向け「さらば」と言い自分に向けて発砲したのであった。
フィンランド生まれのアキ・カウリスマキ監督作品
音楽をふんだんに使用し、作品のシーンに合わせた選択で 歌詞が流れるという特徴がございます。
あっち立てば、こっち立たず。
水道局をリストラされた男性とパブでバラを売る女性。アキカウリスマキならではのメインキャスト。これだけで、”ならでは”なドラマに仕立てられるだろうに、ここにヒットマンが加わる。そのアイディアのおかげで、従来の作品よりもドラマ性が高くなった。一方で、”ならでは”なトーンが後退してしまったのも否めない。
男が生きる意味(酒、煙草、女、花、職)を見つける
アキ・カウリスマキ作品の中で、非常にわかりやすくそのエッセンスを映画にした作品と感じました。
英国の中のフランス人(他者)という設定、職を失う、孤独、映画の中でその回復(決して経済的な回復ではない)の過程を静かにユーモアに見せる、という俺たちが好きなアキ・カウリスマキ!という感じでしょうか。
この作品が作られた背景等は現時点で把握していないですが、まず何を最初に見る?との問いにこの作品を挙げてもよいのではないでしょうか。
ちなみに私は「街の灯り」で、見終えた後に何か数年単位でひっかかっていて徐々に大きくハマっていった過程で、この作品も大満足でした。
地味な味わい
映画がつまらなければ途中で映画館を出る。金を無駄にした上に時間まで無駄にすることはない。今まで何度、途中で映画館を出てたりDVDをイジェクトしたことだろう。それなのに・・・なぜ私はこの映画は最後まで見たのか?・・・いくら考えてもよく分からない。不思議な魅力があった。そして女優が不思議な魅力を持っていた・・・・ということかもしれないなと思うばかりである。
・・・チェックしてみたらこの監督の作品には高得点作品がたくさんあるじゃないか!しかもその中に真夜中の虹があった。昔、彼女に無理やり映画館に連れて行かれて見たっけ。ずっとチェックしていなかったけど、あの監督が今や巨匠になっていたのか・・感慨深いものかあるな。
"BurningLights"
15年も働いて退職金が金の腕時計って売ったら5ポンドでタクシー料金よりも安い訳で死にたくもなる、酒にタバコと女を知ったら楽しい人生、無感情に見える唯の天然かジャン=ピエール・レオとアキ・カウリスマキが組んでオマケにジョー・ストラマーがエルヴィスの写真をバックに演奏する、殺し屋のおっさんの哀愁が堪らない、とにかく爺さん連中が渋くて格好良い。
コメディ要素を醸し出しながらコミカルよりもシュールで淡々と単調に描かれる物語、少しのサスペンスを期待しながらも良い意味で裏切る展開に単純ながらも先が読めない感覚、全体的な雰囲気とアキ・カウリスマキのLookが好みであれば何ら問題無し!?
【生きるべき人生と、病ゆえに死に直面した人生を見事に描いた、アキ・カウリスマキ監督の人間性肯定映画。余命短き殺し屋の最後の行動は、じんわりと心に沁みます。】
■ロンドンの水道局で働くフランス人アンリ・ブーランジェ(ジャン・ピエール・レオ)。
真面目に働いて来たのに、民営化を理由に、突然解雇された彼は自殺を図ろうとするが死にきれず、新聞広告で知った殺し屋コントラクト・キラーに自分の殺害を依頼する。
しかしその夜、彼はカフェで出会った花売り娘マーガレット(マージ・クラーク)に恋をしてしまい・・。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・アキ・カウリスマキ監督お得意の短ショットで、物語はサクサクと進む。
ー このテンポ感を良しとするかどうかで、評価は変わると思う。-
・突然、解雇されたアンリ・ブーランジェは異国の地で、首を吊ろうとするが失敗。で、殺し屋に自分を殺す様に依頼するが・・。
・元ザ・クラッシュのジョー・ストラマーがガンガンに演奏するバーで出会った花売り娘、マーガレットに一目ぼれしたアンリは、生きる目標を見出していく。
ー この辺りのストーリー展開は、アキ・カウリスマキ監督ならではの、情緒観を抑えた描写で映し出される。-
・だが、殺し屋は確実に、アンリ・ブーランジェに近づいていて・・。
ー この殺し屋が癌に罹っており、余命幾ばくもないシーンも実に淡々と描かれている。-
<ラスト、アンリ・ブーランジェを彼の望み通り追い詰めた殺し屋が取った行動・・。
今作は、アキ・カウリスマキ監督作品の中では、異色に分類されるのであろうが、人間性肯定の軸はブレておらず、密かに好きな作品である。>
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