シビラの悪戯 : 映画評論・批評
2001年9月3日更新
2001年9月15日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
猥雑で大らかでおそろしくエッチな人間描写が愉快痛快!
「ロビンソナーダ」(86)のグルジア出身の女性監督、ナナ・ジョルジャーゼ監督の詩情豊かな“おとぎ話”。彼女の母国グルジアの山間の避暑地を舞台に、バカンスにやってきた14歳の少女シビラのひと夏の出来事をつづる。赤毛のソバージュ、透き通るような白い肌のシビラ役、ニノ・クヒアニチェの小悪魔的身ぶり(大胆なヌードあり)にキュンとなる。
シビラの気まぐれな恋愛ごっこ(悪戯)は、サガンの名作「悲しみよこんにちは」みたいに、背伸びしても届かない。甘く切ない初恋の想い出をオブラートでつつむように、川遊び、蜂蜜取り、(船がある!)丘の上のピクニック……彼女をめぐるエピソードが丹念につむがれる。ファンタスティックで、ファービュラスで、マジカルな映像が胸にしみる。
しかし何といっても滑稽なのは、「エマニエル夫人」秘密上映会をひかえ、落ち着かなくなる村の人々だ。エミール・クストリッツァの「黒猫・白猫」!? フェリーニの「アマルコルド」!? ルイ・マルの「五月のミル」!? 猥雑で大らかで、おそろしくエッチな人間描写が愉快痛快だ。セックスをめぐるユーモラスな挿話は下品さを超越した人間賛歌になっている。この笑いのさじ加減がたまらなく好きだ!
(サトウムツオ)