X-MEN2 : 映画評論・批評
2003年5月1日更新
2003年5月3日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
ブライアン・シンガーよ、これは野心作のはずではなかったか
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怒りや苦悩が充満していた前作に比べ、ふっきれている。なにやら戦隊ヒーローもの的様相さえ呈してきた。ミュータントに憎悪を抱く人間とのバトルという新たな構図、ウルヴァリン出生の秘密の解明、ほのかなロマンス……。流れるようにしてストーリーは展開する。しかしこれは何よりもまず、差別や偏見をテーマとした邪悪な俊英ブライアン・シンガーの野心作のはずではなかったか。残念ながら映画を突き動かしているのは、どす黒い情念ではない。シンガー作品特有の陰鬱な気分は抑えられ、前作で消化不良だったVFXアクション映画としての完成度を追求する凡庸な大作になってしまった。
つくづくアクションに宿る思想性というものを考えさせられる。ペキンパーやジョン・ウーや深作を引き合いに出すまでもなく、暴力がいかに作家の生理に結びついているかといった点こそ重要なのだ。暗さを湛え、善も悪も渾然一体となったダーク・ヒーロー映画はめずらしいものではなくなった。シンガーよ、3作目があるのなら、観客に爽快感を与えようなどと血迷ったことは考えず、今度こそ、打ちひしがれた者たちの内面から噴出する、目を背けたいようなアクション演出で勝負してくれ!
(清水節)