劇場公開日 2005年6月29日

「恐怖の中の家族愛」宇宙戦争 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0恐怖の中の家族愛

2017年9月8日
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鑑賞方法:DVD/BD、映画館

スピルバーグ組によるH.G.ウェルズ原作の「WAR OF THE WORLDS」の2度目の映像化。オリジナル原作や映画化第1弾の作品を随所に踏襲しつつ、極度の不気味な演出で盛り上げ方が多彩だ。初めて観た際は怖さのあまり動悸が激しくなったのを今でも覚えている。無慈悲な殺戮マシン「トライポッド」の襲撃シーンには全身に鳥肌が立ち、胸が締め付けられる様な思いになる。だが本作はそこに重きを置いておらず、徹底的に家族愛を描いているのがミソ。流石、スピルバーグ監督だろう。家族での逃避行がほとんどのシーンを埋めているが、それでもトライポッドの恐怖は存分に伝わるところが凄いの一言だ。

トム・クルーズ演じる主人公レイ・フェリアーはダメな父親で、子供をほったらかしにしている。よって子供だけでなく妻からも愛想をつかされるような人物だ。トム・クルーズと言えば、スピルバーグとタッグを組んだ前作、「マイノリティ・リポート」の様な闘う男のイメージが強い。これ以外にも「ミッション・インポッシブル」等の作品でそういうイメージが定着しているが、本作のトムは本当に「普通の人」。普通の民間人が異星人の侵略という未曾有の大災害に遭いながらも命からがら子供を連れて逃げ惑うという物だ。ギクシャクした親子関係の中、トライポッドの襲撃により父として子供を命がけで守るように成長していく。ベタといえばベタだが、それをあの「宇宙戦争」で描くことが出来るのはスピルバーグ監督だけではないか。少々終盤の盛り上がりが欠けたままラストに突入するのが不満だが、ヒーロー的な物語になりがちなこの手のSF作品とは趣の違う名作である。

Mina