「天才たちが王道で勝負してきた!」宇宙戦争 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
天才たちが王道で勝負してきた!
「宇宙戦争」見ました。
もう最高です、トムクルーズのダメ親父ぶりが。特に序盤の35分くらいまで。キャッチボールでのガキみたいな意地の張り方、ピーナッツアレルギーからのポカーンからの窓にペチャっ。あとはダメ親父とは関係ないけど、根拠も無いのにやたらと「大丈夫だ。ここなら大丈夫だ。」みたいな事連発するんですよ。あ、こいつ子供とか家族の扱い何もわかってない感がハンパ無い。で、彼がそんな情け無い事ばかりなのかを考えると、それはトムクルーズと子供の関係が完璧じゃないから。というのと、自分は父親なんだと思いたい&思わせたいからなんだと感じた。思わせたいというのはよくあるけど、この思いたいという感情がトムクルーズのダメ親父の象徴的な肖像だ。素晴らしい。やっぱりトムクルーズは、スーパースターとしての型にハマっていなくて、いろいろな面を観れるから本当に楽しい映画人。格で全く及ばないジョニーデップなんかはその辺を見習った方がいいよね。
演出も素晴らしいと思います。登場人物に状況を大声で叫ばせるなんてダサいことはせずに語ってる。個人的にグッと来た描写は、車のフロントガラスを素手で割り破る所と、踏切で炎に包まれた列車が猛スピードで通過する場面。ここの二つは、事態がいかに切迫していて絶望的かをスゴく簡潔に描いている。それも主人公の道中において、全く違和感なくブチ込むあたりはさすがのスピルバーグかな。
人間がレーザーみたいなのでボワっと消えて無くなる描写は、個人的には興醒めしました。まず、ボワッと消えてなくなるだけだと残虐感がかなり薄まります。やっぱり少しは血を見せてくれないと、こちらとしては...。中盤以降は苔みたいな血を写すけど、これは何なんだ感が凄まじいです。けどボワっとな描写も、宇宙人は人間を塵の如く扱ってる事のメタファーだと考えれば納得です。
総じて、傑作です。出演者とスタッフの顔触れを見れば分かるけど、真剣に映画を作ってるという意識わヒシヒシと感じました。トムクルーズはやっぱり最高だね。