トロイ : インタビュー
昨年の「ハルク」に続き、今年もサマーシーズンの大作で重要な役を演じ、ハリウッドでの存在感を上昇させているエリック・バナ。トロイ軍のリーダーであり、精神的な支えでもあるヘクトルは、数多くの登場人物の中で、もっとも観客にとって身近な存在といえる。その役作りについて尋ねた。
エリック・バナ インタビュー
「ヘクトルを身近に感じて、理解してほしい」
編集部
――夫という立場や王子としての責務など、ヘクトルは背負うものが多い人物ですね。
「彼は常に岐路に立たされているんだ。どの道を進めば良いか自分ではわかっているのに、周りの人々によって進むべき方向性が決められてしまう。けれど、何があっても、どんな人に対してもヘクトルは慈悲深い。王である父やトロイの運命、神の導き、危険をもたらしてしまうパリスとヘレンなど、彼は自分の立場でそれらのバランスを保とうとするんだ。観客にはそんなヘクトルを身近に感じて、彼を理解してほしいな」
――演じる上で難しかったのは、どんなところでしょうか?
「他の登場人物と比べて、どれだけ“生きる”ことに執着しているかを表現することが難しかった。彼は単に死ぬことが怖いのではなくて、“生きたい”から死にたくない――“生きる”という行為を愛しているんだ。アキレスとの決闘の前に、ヘクトルが家族に別れを告げるシーンは、彼の死をも匂わせて切なくなるよね。そして、アキレスと対峙し、彼の存在感に圧倒されて、負けてしまうかもしれないと感じる。僕にとっては、観客にヘクトルに勝つチャンスはあるのだろうか? この先どうなるのか?ということを期待させるため、決闘の始まる瞬間をどう表現するかがとても重要だったんだ」
――共演したブラッド・ピットはいかがでしたか?
「ブラッドは一緒に仕事をするには最高だね。彼の演じたアキレスには感動したよ。ブラッドはリーダーシップもあるし、みんなもそう思っていたと思うよ。とにかく特別な奴なんだ」
――対極的なアキレスとヘクトルが剣を交えることになるわけですが、あのシーンでは、どのようなところに気を遣いましたか?
「あの決闘シーンでは、とにかく体の動きが大切だった。ヘクトルの生き残りたい、何が何でもアキレスを倒したいという気持ちを出すには、体の動きのことは忘れなくてはならない。そのために、何も考えずに体が動くようになるまでトレーニングしたんだ。アクションの振り付けには、撮影前のトレーニングなどを含めて全部で8カ月かけたけど、おかげで最初から最後までノンストップで出来るようになったよ。まるで1つの長いダンスを踊っているようだったね。『イリアス』の中でも、今回の映画の中でも、あの決闘の勝敗はとても大切な部分で、演じてる自分自身にも、何が起きているのか常に言い聞かせていなくてはならなかった。僕にとっては肉体的にも精神的にも、何事にも代えられない経験だったよ」
――あなた自身この役を演じたことによってどのような影響がありましたか?
「忍耐力が身についたと思うよ(笑)」
――「トロイ」が持っているメッセージについて、実際に参加されてどう思われましたか?
「世の中には、歴史を学ぶ人よりも、自分たちの歴史を作ろうとする人が多くて驚くよ。、自分の歴史を作るのをやめ、今までの歴史で何が起きたのかを学べば、世の中はもっと平和になるだろうね」
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