劇場公開日 2003年5月17日

「何度も観たくなる作品 DVD特典も充実!」めぐりあう時間たち カオナシさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何度も観たくなる作品 DVD特典も充実!

2011年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

知的

『ダロウェイ夫人』を執筆するヴァージニア・ウルフ(1923年・ニコール・キッドマン)、温かい家族の中で自分を見出せないローラ・ブラウン(1951 年・ジュリアン・ムーア)、かつて恋仲だった詩人の世話を焼くクラリッサ・ヴォーン(2001年・メリル・ストリープ)。3人の女性を主人公に、自己の魂に忠実な居場所を探し求める人々(それぞれが芸術と実生活、同性愛的傾向と異性愛の間で深く傷ついている)と、彼らをとりまく周囲の人々の献身を描いた作品。自分自身であること、他者に寄り添うことの意味をここまで突きつめた映画も珍しく、最後にローラが登場する場面はじんわりとした感動に包まれる。

3つの時代を結ぶデイヴィッド・ヘアの名脚本、フィリップ・グラスの美しい音楽も去ることながら、最大の見所はやはり3人の女優が見せる一世一代の名演にある。2枚組仕様の特典には、監督と原作者マイケル・カニンガムによる解説のほかに、ニコール、ジュリアン、メリルのコメンタリーも収録されていて、面白い(Disc 1)。なかでもラストシーンに関するエピソードは印象的で、50年後のローラを最初は別の俳優を使って撮ったが、説得力がなく、ジュリアンのスケジュールが空くのを待って撮り直したのだという。スタッフとキャストが一丸となって、映画に生命を注いだのがよくわかる逸話だ。

コメンタリー以外にも、メイキングやウルフ関係の映像、作曲家自身による音楽解説を見ることができる。心ゆくまで映画を堪能したい方には、この2枚組が断然オススメ。

カオナシ