チーム★アメリカ ワールドポリス : インタビュー
「サウスパーク」でおなじみのトレイ・パーカーとマット・ストーンのコンビの新作劇場映画は、「サウスパーク」よりもさらに過激でさらに笑える「チーム★アメリカ/ワールドポリス」。果たして彼らはどのようにして、これらの作品を生み出しているのか?
トレイ・パーカー&マット・ストーン インタビュー
「ブラッカイマーの映画が笑えるのは、アホらしいストーリーをクソ真面目にやってるからなんだ(笑)」
聞き手:編集部
――「チーム★アメリカ」は、脚本を書きながら、撮影を行っていたそうですね。
トレイ:「うん。オープニングとラストは決まってたんだけど、中盤でなにが起きるかは、おれたちにもわからなかった(笑)」
マット:「でも、他のハリウッドの映画のように、脚本がクソみたいな代物だから書き直しを迫られたっていうわけじゃないぜ。しっかりとした脚本があったし、アプローチの仕方も明確に分かっていた。ただ、1週間ほど撮影をやって、仕上がったフッテージを観たら、脚本を大幅に変更しなきゃいけないことが気づいたんだ」
――何が問題だったのですか?
マット:「大雑把に言えば、シリアスさが欠けていたんだ。ジョークがたっぷりで、ドタバタだらけで。でも、パペットがいくらドタバタしても、それほどおかしくない。それで、はたと気がついた。ジェリー・ブラッカイマー映画が笑えるのは、アホらしいストーリーをクソ真面目にやってるからなんだ、って(笑)」
トレイ:「なにしろ、人形を使ってブラッカイマー映画を作るなんて、だれも挑戦したことのないからね。毎日が試行錯誤の連続だったよ」
――テレビシリーズの「サウスパーク」にしても、ぎりぎりにならないと執筆に取りかからないそうですね。
トレイ:「うん。いつも放送の1週間前になって、ようやく脚本を書き始めるんだ。水曜が放送日で、その翌日からストーリーを練り始める。アイデアをぶつけあったりして。で、金曜日にアニメーション作業がスタートする」
――そんな危険なやり方で、よく今まで続いてますよね(笑)。
マット:「たまに、うまくいかない(笑)」
トレイ:「実はこれまでに3、4回、土曜日になってもアイデアが出なかったことがあるんだ。スタッフみんなが3日間缶詰状態なのに、思いつくこと全部がつまらない。あと4日で放送しなくちゃいけないから、アニメーションのクルーは指をこまねいて待っているって状態で。でも不思議なことに、これまでそうした状況になったときは、いつも最高のエピソードに仕上がってるんだよ」
――それは、どうしてだと思いますか?
マット:「ひとつには、おれたち2人がひどい物臭だっていうことだね。追い込まれないと、本気を出さない。前もって計画を立てるのが大の苦手で」
トレイ:「さらにひどいことに、2人とも考え過ぎてしまうきらいがある。時間があると、そのぶんだけ、取り留めのないアイデアを思いつく。『チーム★アメリカ』のときも、撮影を半分くらい終えたあとで、主人公の設定を変えてしまおうって思ったんだ。『役者なんて設定はつまらない。他の職業に変えちまえ』って。でも、具体的にはどんな職業がいいか思いつかなかったから、『とりあえずスーパークールな男ってことにしよう』って(笑)」
――(笑)
マット:「おれも、『それは良いアイデアだ! 確かに彼はスーパークールだ! どんな仕事をしてるのかはわからないけど、とにかくクールだ!』なんて興奮して(笑)」
トレイ:「つまり、ぼくらは時間があれば、他愛のないことをさんざん思いついてしまう。『サウスパーク』の場合、各シーズンの最初のエピソードの出来があまりよくないのも、そのせいなんだ。準備期間が長すぎたために、アイデアを詰め込みすぎて、わからりづらくなってしまう。でも、準備期間がなくなってくると、シンプルなストーリーを意識するようになるから、自ずといいエピソードになってくるんだ」
――「チーム★アメリカ」を観て痛感したのですが、あなたたちはこれだけ長く成功を続けながらも、笑いのセンスやエッジを失っていないですよね。その秘訣はなんなんですか?
トレイ:「いや、実はその点については危機感を持っているんだ。過去2年間を振り返ってみても、おれたちはその8割の時間を映画のセットか編集室で過ごしている。だから、自ずと映画業界のパロディが増えてしまっているんだ。だから、とりあえずこの夏は4カ月のオフを取って、普通の生活を取り戻そうと思っているんだ。久々に買い物なんかも、自分1人でやってみたいし(笑)」
――今後のご予定は?
マット:「秋から『サウスパーク』の新シーズンをやる。それ以外はまったくの未定。『チーム★アメリカ』には3年もの月日を費やしたから、今はとにかく休暇が欲しくてたまらない(笑)」