劇場公開日 2005年11月5日

TAKESHIS' : インタビュー

2005年11月9日更新

89年「その男、凶暴につき」の衝撃的なデビューから16年、「HANA-BI」(97)での金獅子賞、「座頭市」(03)での銀獅子賞(監督賞)という2度のベネチアでの栄誉を経て世界的映画作家となった北野武=ビートたけしが、哀しくなるほど自らをさらけ出した集大成「TAKESHIS'」。9月にベネチア映画祭コンペテション部門に出品し、話題をさらった本作の日本公開を機に、北野武監督がインタビューに応じてくれた。(聞き手:編集部)

北野武監督インタビュー
「何を描いたのかというと、実は画面に映っていない自分の姿なんだよ」

ジャパンプレミア開催当日に インタビューに応じてくれた監督
ジャパンプレミア開催当日に インタビューに応じてくれた監督

──今回の作品では、今までのいわゆる北野映画、北野スタイルを意識した多数のシーンを登場させて、それを自虐的に茶化した演出をしていますが、今まで築き上げてきた自らのスタイルと決別するつもりで「TAKESHIS'」を作ったのでしょうか?

「いい例えがあるんだけど、コンビニにあるような卵のパックがあって、それに1個1個詰めていって、最後にこの新作を入れて、12個入りの1パックが出来上がりといった感じかな。だから、この次の映画からは新しいパッケージに違う種類の卵、例えば烏骨鶏の卵をいれるような感じになると思うよ。だけど、同じ人が作る映画だから、同じことやると思うよ。少なくとも本人は違う作風の映画を作ろうと思ってるんだけどさ(笑)」

──本作は10年以上温めていた企画ということですが、オリジナルから変更した点は?

「最初はタクシーの運転手が主人公の話でね。それでその運転手が色々な夢を見る話だったんだけど、今はタクシーの運転手が主人公の映画っていっぱいあるからね。タクシーの運転手を主人公にするのをやめようということになった。それで、台本を温めてきたっていうことになっているんだけど、実は全部ウソ(笑)。原型を留めているのは、タクシーの運転手が出ることと、夢を見たってことだけ(笑)。あとはほとんど2~3日で考えたことなんだよ」

──本作には2人の「たけし」が登場しますが、この2人のキャラクターの違いは?

タクシー運転手が発想の発端?
タクシー運転手が発想の発端?

「スーパースターの『ビートたけし』は、世間一般の人から見たスターのイメージ。オレ自身が、こういう風に見られているんだろうなっていうキャラクター。もちろん、本当のオレは、映画の中の『ビートたけし』とは違って、もっと上品だよ(笑)。それに対して、コンビニで働く売れない役者の『北野武』は劇中のスーパースター『ビートたけし』が想像する売れない役者のイメージなんだよ。結局は、スーパースターの『ビートたけし』が見ている夢なんだ」

──この映画の大半が夢の中という設定ですが、自身の最近の夢体験について。

「オレの運転手に夢の中で殴られたよ。車に乗ってて『おい』って運転手を呼んだら『てめえ、うるせえよ』とか言われて、高速道路なのに車から降ろされて、ボコボコにぶん殴られたんだ。で、その場に置き去りにされて『あの野郎、殺してやる』なんて思ってたら目が覚めて、電話が鳴っていて、受話器を取ったら『お迎えに参りました』って運転手が迎えに来てたんだよ(笑)」

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インタビュー2 ~北野武監督インタビュー(2)
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