シリアナ : インタビュー
本作は元CIA諜報員のロバート・ベアが記した自伝「CIAは何をしていた?」が元になっている。76年から97年の間、CIAの作戦本部で活動していたロバート・ベアが見た映画「シリアナ」とは?(聞き手:編集部)
原作者ロバート・ベア インタビュー
「私はこの映画によって解放されたと思う」
――映画化の話を聞いたときはどう思いましたか? また完成した映画をご覧になった感想は?
「映画として観たというより、私の本を映像で観たという感じだ。サンタモニカのカフェで(スティーブン・)ギャガン監督やスタッフと会ったとき、彼らは私にいくつかの質問をしたが、明らかだったのは、彼らは本に描かれていない要素を探してたということだ。だから“一緒に中東に行ってみますか?”と言ったよ。実際に現地の声や騒音を聞くほうが、本を読んでいるだけよりよいと思ったからだ。また、人々がどんな暮らしをしているか、家族の関係などを目にすることができるからね。中東では家族が大きな意味を持っているからね」
――あなたをモデルにして演じたジョージ・クルーニーはいかがでしたか?
「最初にクルーニーに会うため、彼の家に呼ばれていってみると、口ひげを生やして少し汚れた身なりの男が門のところで私を出迎え、スーツケースを持ち運ぼうとした。私はその男が家の世話係なのかと思ったら、彼がクルーニーだったんだ。クルーニーは映画で何を描きたいかを一度も言わなかったが、映画を観れば彼がやりたかったことは一目瞭然だ。彼は中東地域での横暴な取引や、底辺にある世界を見ること、そしてCIAで仕事をしてワシントンに帰ってきて裏切られたと感じること……また、崩壊した世界に驚くことを描きたかったんだ」
――映画の製作段階で「実際はこうではない」と言いたくなったことはありましたか?
「脚本ができあがった後、ニューヨークでギャガンに会い、国家安全保障会議の場面での人物の話し方などをアドバイスした。ただ、基本的に彼らの映画なので、それ以外では特に口出ししたことはないよ。私はこの映画のコンサルタントではないから、完成した映画しか観ていないんだ。あとはドバイにセットを建設する際に、現地のセキュリティーを手配したくらいだ」
――石油業界のこの映画に対する反応は?
「ギャガンにも紹介した製油業界のトップにいる人物が、『この映画はもっともすぎるくらい、現実そのままだ』と言っていたよ」
――映画製作のプロセスで興味深かったことはありますか?
「私はこの映画によって解放されたと思う。私が21年間過ごしたCIAは、自分たちの仕事について嘘をつかなくてはならないところだ。私の子供たちは、私がTVに出演しているのを見るまでCIAで仕事をしていたことを知らなかったしね。そこには、虚偽を語るシステムができている。だから私は、真実を理解するように正直だと思う本を書いたし、そして映画もある種の真実を伝えている。実際に起きている真実を語ることは、私を本当に解放してくれたよ」
――観客には何を感じとってほしいですか?
「システムが崩壊しているということを、わかってほしいと思っている。とりまく環境が変わってきているんだ。私たちは石油に頼り、依存しているが、それは変えなくてはならない。石油業界に君臨する個人ではなく、この映画で描かれているシステムこそが戦う相手なんだ。このシステム全体をより良く変えるか、それともハードな崩壊を迎えるのか、ということだ」