「スターウォーズサーガの完結編」スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 ジョー・ジョー・エンさんの映画レビュー(感想・評価)
スターウォーズサーガの完結編
スターウォーズサーガが完結し、旧三部作と新三部作を繋げる役割を担う本作。多くの伏線を回収し、後のエピソード4に自然な形で繋がるようにストーリーを進めていく手腕は見事だった。
エピソード4でオビワンがドロイドのことを覚えてなかったり、レイヤ姫が母親のことをなぜか覚えていたり(育ての母親の可能性はあるけど)製作が進む上で変更された設定があると思うので細かい違和感はあるが、全体的にはスムーズに移行していると思う。
ストーリーの面で言うと1人のカリスマによって民衆がねじ曲がり、共和国が崩壊し独裁政権が確立されるというもの。
ジェダイの反乱を訴える皇帝の言葉をすぐに信じてしまう元老院は一見マヌケに見えるが、イアンマクダーミドの演技が素晴らしく、ヒットラーの様に圧倒的なカリスマ性を感じさせるので場面に説得力がある。
そもそも、エピソード2で表向きは戦争が始まるずっと前からジェダイが共和国に相談もなくクローン軍の設立を進めており、戦争中も軍をまとめる将軍として活躍していた経緯もあるので、“実はクローン兵は共和国のためではなくジェダイが共和国を掌握するために用意した兵で、クローン戦争が始まる際に気づいて戦争に用いたからよいものの戦争がなければ共和国が危なかった”と言われたら確かにと思ってしまう。
ジェダイは議長を逮捕すらせずに暗殺しようとしてしまうしアナキンの言う通り確かに筋を通していない。
多くの民衆からしたら確かにジェダイはとんでもない暗殺集団ということになってしまうのもムリはない。
ここではジェダイが正義を振りかざすが、それは本当に正義なのか悪なのかハッキリしない。アナキンとメイスのやりとりからは正義と悪が絶妙に揺れ動く様が見て取れる。
現実世界でも正義と悪の境界線は曖昧で、スーパーマンみたいに正義と悪ははっきりしない。それをうまくSF映画に落とし込んでいると思う。
アナキンのダークサイドへの転身は展開が早く、サラッと堕ちてしまう印象があるが、パドメを救いたいという感情だけで皇帝について行ったわけではないと思う。
エピソード1ではアナキンは共和国で禁止されているはずの奴隷で、台詞の中であるように共和国がいつか解放しにきてくれると信じている。運良く奴隷解放されたが、実際に目の当たりにした共和国は腐敗と汚職が蔓延り機能しておらず、タトゥイーンの法整備などしてくれそうにもない。エピソード2のセリフの中にあるように、話し合うだけではなく上手く議会を導くリーダーが必要と考える。パルパティーンを評価し彼こそが選ばれし政治家だと心酔していく。その様子はエピソード2、3で描かれる。
パルパティーンの甘言でジェダイも共和国同様に腐敗しつつある組織であると徐々に感じ始めたアナキン。シスの力で愛するものも死から救えると知り、さらにシスの教えに興味を持つ。
そしてメイスウィンドゥがパルパティーンを暗殺しようとしたことで疑いが確信に変わってシスの暗黒卿に転身したのだ。
アナキンは徹底して白黒をはっきりさせるキャラクターとして描かれる。タスケンレイダーは人をさらうから悪、分離主義者は共和国と対立するから悪。シンプルに物事を決定する性格をヘイデンクリステンセンはよく表現していたと思う。(ラジー賞もらっちゃったけど)
A「味方でないのならお前は敵だ」O「シスらしい決め方だ」と言うのはオビワンと対決するシーンのセリフだが、これはシスに転身する前からこういう思考だったのだろうと思う。
ジェダイが暗殺にくることが帝国設立のカギになっているので、もし、ジェダイが暗殺しようとせずにパルパティーンを逮捕して法廷の裁きにかけて全ての悪事を暴いていたら帝国設立は夢に消えていただろう。ジェダイの奢り昂った正義感が共和国を破滅に導いたとも言えそうだ。