「健康と選択」スーパーサイズ・ミー tokyotonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
健康と選択
マクドナルドメニューだけで一ヶ月過ごす。健康や精神状態にどんな影響が出るか?という監督が身体を張った映画だったけど楽しかった。
発端は肥満大国アメリカの問題提起として、人々に親しまれている外食、ファーストフード、その中でもマクドナルドに対象を選んだ映画。
「自分が食べている栄養やカロリーについて知ってる?コントロールは出来てる?」と問いかけられているように感じた。「不健康な食べ物を安く売って食べる人を不健康にさせている」という批判で終わる映画ではない。
マクドナルドのせいで肥満になった、不健康な食べ物を売った、という訴えが棄却という話題から、裁判官が示した「毎食食べることが危険だと示せれば再提訴できる」という言葉を実際に試してみた!という映画だ。
監督は、ただ食べるだけじゃなくて、正確な健康状態を知るために、栄養管理や医療の専門家に経過を診てもらっている。
定期的な診察により、すぐにこんな実験はやめるよう勧められていたり、体重という具体的な数値がたったの一ヶ月でここまで増えるのかという驚きをくれる。
また本作はそれだけじゃなくて、アメリカの肥満率の高い州に赴き、食べて回る。「スーパーサイズはいかがですか?」と提案を受ける回数も比例しているわけだ。
取り上げられる分野は監督の健康状態だけではない。学校給食のメニュー(多くがフライドポテトなどのファーストフードを取り入れている)や、テレビCM、店に設置されている遊具やグッズ等による子どもたちのファーストフード店の認知度なども題材になっている。
幼い頃意味がよく分からなくてもタバコの玩具で遊んだ記憶があれば、成人してから健康障害があると分かっていてもタバコに手を伸ばしやすいのではないかという問題視。
食育されていない子供が自分で食事をよりよくコントロールできるのか?
またHPでマクドナルドは栄養素やカロリーについて記載していたりパンフレットも発行している。
しかし多くの人はそれに興味を持たないし、見ようと思わなければ知ることはない現状を映像を通して教えてくれる。
一言では片付けきれないし、原因も他にあるはずだが、「社会で高い地位を持つファーストフード会社に責任の一端はないか(ていうかあるだろ)」という意欲的な問いは見ていて面白かった。
自分の食べ物にも運動にも目を向けようと思わせてくれる映画だった。
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監督は当初は健康的な身体だけれども、もちろん日が経つごとに不健康になっていく。
具体的には体重が10%以上増え、肝臓が炎症を起こしていると警告を受けていたり、一ヶ月だけで数年分の推奨カロリー摂取量を超えていると栄養士に指摘され、コーラを止めて水を飲むようアドバイスを受けたり。
ラストにはここ一ヶ月でとった砂糖の山と、肉の脂肪を切り取ったものが監督の前に山積みされる。元の体に戻すのに一年は掛かったことを締めで知れる。
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主題とは関係ない部分だけど、映画にはビーガンの監督の彼女が登場する。
監督はビーガンではない。ので彼女からしてみたら、わざわざ身体に不健康な食材を入れているのと一緒だ。タバコに置き換えてみれば分かる。肉食はビーガンにとってはタバコと同じようなもの。
お互い理解不能と言っているかのような表情は見ていて面白かった。
そして主義が違えど、一緒に過ごしていたり、パーティに参加していたりと争うこと無く多様が映されているようでよかった。