スーパーサイズ・ミー : 映画評論・批評
2004年12月15日更新
2004年12月25日よりシネマライズほかにてロードショー
人は“健康に悪い”ものをあえて体に注入したくなるものだが
ファーストフードは健康に悪いだなんて誰もが口にすることだが、僕らはどこかでハンバーガーに抵抗しがたい魅力を覚える。むろん安くて早いからでもあるけど――タバコがその典型だが――人はどこかで“健康に悪い”ものをあえて体に注入したくなるものだ。ハンバーガーは悪魔なのか天使なのか?
そんなわけで1人のアメリカ人ドキュメンタリー映画作家が、ある単純な実験を行ない、映画にする決意を固める。その内容とは、1カ月間、朝昼晩とただただマクドナルドで食事をとりつづけ、それが彼の身体に及ぼす影響を検査すること……。
笑ってみていればいい娯楽映画だし、実際面白い。ただ、「華氏911」でも描かれていたが、現在のアメリカは2つの階級――金持ちと貧乏人――に分断されいていて、当然マクドナルドは後者の必要アイテムである。本作の主張はそれを“搾取”や“洗脳”と言いかえるものだが、どこかでマクドナルド・ユーザー(ダメな階級)を嘲笑するサメた距離感も感じられる。実際、監督は映画の撮影後にはダイエットを実践し、元の健康体に戻る意志と余裕の持ち主なのだ。
とはいえ、世界的な大企業に突入するドン・キホーテぶりは買えるし、気持ち良く笑える。この映画を見終えてなおハンバーガーを食べつづけるには相当の度胸が要求されるだろう。
(北小路隆志)