「『スパイダーバース』の前に、こんな革命的映像を実現した作品があったのか!と現在でも驚かされる一作」スキャナー・ダークリー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
『スパイダーバース』の前に、こんな革命的映像を実現した作品があったのか!と現在でも驚かされる一作
2006年公開の作品なので、アニメ界に革命をもたらしたと言っても過言ではない『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)に先立つこと12年なんだけど、アメコミの絵柄をそのまま映像化するという表現手法が既にここまで完成していたことに改めて驚いてしまいます。
フィリップ・K・ディックの、猥雑で欲望と陰謀むき出しの世界観を忠実に反映しているため、絵柄、語り口のどちらも、『スパイダーバース』のようなポップさは薄く、その点でかなり好みが分かれる作品であると言えます。冒頭からなかなか強烈な描写なので、虫が苦手だったり、集合体恐怖症がある人が鑑賞するにはかなり勇気がいるかも。
話の筋を追うというよりも、目の前で起こっている状況から判断できる認識がことごとく覆される状況が連続するため、足元がぐらつくような感覚は恐怖感を覚えるほどです。
絵柄といい、物語といい、そしてダイアログに重きを置く作劇といい、『ブレードランナー』(1982)といった他のディック原作作品よりも、ゲーム『ディスコ エリジウム』を強く連想するような作風で、このゲームが好きなら絶対本作も楽しめると思います!
リチャード・リンクレイター監督は、実写作品の経歴からだと本作のような作品を作るとは想像しにくいんだけど、本作の前に『ウェイキング・ライフ』(2002)という、実写とアニメーションを融合させたような実験的作品を作っています。そちらを観ると、本作が登場するに至った過程を理解する一助になるかも。
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