劇場公開日 2019年12月21日

「ジョー・ストラマーが好きな人はみんな友だち」レッツ・ロック・アゲイン! バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジョー・ストラマーが好きな人はみんな友だち

2020年3月20日
PCから投稿

セックス・ピストルズと並んでパンクロック黎明期を盛り上げたザ・クラッシュのジョー・ストラマー。誠実で真摯な“いい人”エピソードが多すぎて、もはや聖人レベルの扱い。別のドキュメンタリーではドラムのトッパーの彼女を寝取った件が明かされたりもしているので、決して聖人君子とは思わないが、早すぎた死の最晩年を描いたこのツアードキュメンタリーは、やはりジョーへの愛おしさで胸が詰まる。

撮影当時はソロプロジェクトで組んだ新バンド、メスカレロス名義の二枚目のアルバムを出し、ワールドツアーを回っていた。監督を務め、カメラを回しているのは映画『ストレート・トゥ・ヘル』で共演していた俳優のディック・ルード。ジョーが亡くなっていなければ、友人が取ったプライベート映像か、コンサートDVDの特典映像くらいでで終わっていたかも知れない。

白眉なのはコンサートシーンよりも、ソロ活動を軌道に乗せようとラジオ局をアポなし訪問したり、自ら街頭でチラシを配ったりするジョーの姿。かといって必死というのとも違う。偉ぶることなく、やれる限りのことをやって、自分の音楽を届けたい。一度伝説を作った男の「レッツ・ロック・アゲイン」な姿が実に感動的。この時の来日公演に行かなかった後悔は、墓場まで持って行くことになると思っている。

村山章