「負うた子に教えられ・・」ペイ・フォワード 可能の王国 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
負うた子に教えられ・・
原作者のキャサリン・ライアン・ハイドさんは車の炎上事故で見知らぬ人に救出されましたがお礼を言おうにもその人が見つからなかったそうです。そんなご自身の体験から恩返しでなくPay It Forward(恩送り)のプロットを思いついたようです。また、彼女は非営利の団体活動を起こしPay It Forward運動の拡がりに尽力しているとのこと。
劇中、社会科の授業で出た課題が世界を変えるための行動例、アイデアをだすことでした。当然、子供たちにはちんぷんかんぷん、ホワイトハウスに考えてもらいたいほどの大風呂敷です。先ずは世界、世の中を知るところから入らねばと言うのは分かっているのでしょうがその辺のやり取りは省かれてしまいます。思い出したのは幼稚園児に哲学をさせるというフランスのドキュメンタリー映画「ちいさな哲学者たち」でした、歳不相応としても、先生の方も具体的な成果より考える習慣、動機づけを期待してのことでしょうから致し方ないでしょう。
主人公のトレヴァーが思いついたのは善行のネズミ算、別の3人に施すことで世に善行を広めるアイデアでした。友人たちは夢物語、シモネット先生はユートピアと言います、トレヴァーは「それってパーフェクト・ワールド?」と聞き返します、これはケビン・スペンシーの同名の映画を掛けたセリフ、くすぐりですね。
ただ、この構想は性善説に立たなければ繋がりません、また善い行いといっても解釈は人それぞれ、高級車を恵むことや泥棒を助けることが果たして善行でしょうか、上から目線の施しでは余計なお世話と拒まれたり、逆恨みを買わないとも限りません、映画でも律儀なホームレスがたびたび出てきますが恵まれない人の象徴なのでしょうか、あるいは人間逆境に無ければ恩の有難味は分からないだろうということでしょうか、原作者も監督も女性ですからリアリストです、善行の輪、チェーンの脆さは百も承知だったのでしょう、エンディングからも悲壮感が伺えますが賛否の分かれるところでしょう。
さしもの名優たちも天才子役ヘイリー・ジョエル・オスメントには顔負けでしたね、彼あっての映画です。それにしてもアル中、薬中、DVにいじめなどアメリカ社会の病巣、いやアメリカに限りませんが根の深さには唖然とするばかりです、微力ながら映画に出来ることなら何でもやるとのハリウッドの良心の叫びのような映画でした。ただ、不幸な子供の映画は辛いですね。