「ジャン・ギャバンの魅力が冴える《フレンチ・ノワール》」現金に手を出すな 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ジャン・ギャバンの魅力が冴える《フレンチ・ノワール》
1954年(フランス/イタリア)監督:ジャック・ベッケル。
原作はギャング出身の作家アルベール・シモナン
ジャン・ギャバンの魅力に平伏しました。
千両役者・・・本当にお金を払っても、一食抜いても観たくなる魅力。
だって観終わって「なんとも良い気分」で満たされるんだもの。
ジャン・ギャバンはちょうど60歳位ですね。
ギャングのマックスはオルリー空港で強奪した金塊5000万フラン分を、
自宅地下の新車のトランクに隠し、ほとぼりが冷めるのを待っていた。
そろそろギャング稼業からの引退を考えるマックス(ジャン・ギャバン)。
うっかり片腕のリトンにそれを漏らしてしまう。
更にリトンが愛人踊り子のジョジョ(ジャンヌ・モロー)に話す。
ジョジョはマックスと対抗する新興ギャングのアンジェロ(リノ・ヴァンチュラ)の愛人でもあった。
(ジャンヌ・モローは小さい役ながら、やはり曲者ぶりを発揮してます)
アンジェロにジョジョが伝えたことから、金塊の争奪戦の幕が降りるのです。
前半はマックスの日常や交友関係が描かれて静かに進みます。
ギャングさんの優雅な日常、酒に女にクラブ遊びとね。
マックスはモテるんだなあ、とにかく女に優しい。そしてマメ。
そして旧友のリトンとは腐れ縁で、これがマックスの泣きどころでしたね。
後半の30分は、急激にギャング映画の本領を発揮します。
リトンがアンジェロに拉致され、マックスはリトンと引き換えに金塊を渡すことを迫られる。
この金塊とリトンの交換シーンから、とんでもない銃撃戦に発展するのです。
ここがやはり見所でした。
機関銃を撃ちまくるジャン・ギャバン。
敵は機関銃+手榴弾ですよ。
夜間の道路で引き渡される金塊。
白黒画面に黒と白のクラシックカーが映えます。
金塊は渡されて、そこが着地点ではないのです。
ショッキングな展開をして苦く暗い筈のラスト。
ジャン・ギャバンの余裕の表情が、どこか救いになっています。
よく似た題名の「現金に体を張れ」とは、また違った犯罪映画でした。
理詰めで計画された「現金に体を張れ」より、エモーショナルに訴えてくる
「現金に手を出すな」
こちらの方が私の好み。
楽しかったです。