劇場公開日 2006年5月13日

ナイロビの蜂 : インタビュー

2006年5月1日更新

本作の演技で見事アカデミー賞助演女優賞を受賞したレイチェル・ワイズ。本作のキーとなる人物ともいえるテッサを演じた彼女が、役柄について、作品について語る。(聞き手:若林ゆり

レイチェル・ワイズ インタビュー
「私にとって、世の中の状況を語る役はこれが初めてだったの」

本作でオスカーを獲得したレイチェル・ワイズ
本作でオスカーを獲得したレイチェル・ワイズ

レイチェル・ワイズがこの作品で演じたテッサほど鮮烈なヒロインには、そうそうお目にかかれない。情熱の塊のような彼女はアフリカでの人道活動に命を捧げ、志半ばにして散っていく。そしてその情熱と思いが、映画全体から迸っているのだ。

「テッサは、自分の信じていることのためには命も賭けるような人なの。驚くべき性格だと思う。私にもそういうところがあったら、と憧れるわ。特に好きなのは、彼女の複雑さ。とても強くて、いたずらっぽいところもあれば、頭痛の種でもある。彼女にはいろんな面があるの。私たちみたいにね」

テッサと夫のジャスティンはいろいろな意味で正反対であり、お互いのなかに踏み入らない「領域」をもっていた。そんな2人の夫婦関係をどう解釈する?

互いの大きく違う部分が互いを引き立てあう2人
互いの大きく違う部分が互いを引き立てあう2人

「ある意味で、2人は最初、似たような環境にいた。裕福な階級にいたんだけれど、そこから大きく違った方向に向かったのね。ジャスティンは外務省に勤め、問題を起こさないようにしている。テッサのほうは、自分の恵まれた環境に罪の意識のようなものを抱き、それを還元したいと思っている。政治的には自由で急進的。問題を起こすことに大きな喜びさえ感じているわ。人の命を救う、なんていう有益なことのためにはね。トラブルメーカーよ。でも私(テッサ)は、彼の頼もしく、安定しているところが好きなの。道徳的でまじめな人だし。彼は私がとんでもないことをしでかしても、ときには誇りに思ってくれる。私は大胆だから。いいコンビだと思うわ、お互いを引き立て合って。2人とも彼のような人だったり2人とも私のような人だったりしたらつまらないもの」

彼女もまたレイフ・ファインズ同様、メイレレス監督の独自性を大いに楽しんだという。

世の中を変えるために働き続けるテッサ
世の中を変えるために働き続けるテッサ

「フェルナンドは、みんなの口からふと出てきたものが好きなのよ。ものすごくリアルでドロドロしたものが好き。私がしゃべってからあなたがしゃべる、っていうような演劇的なものじゃなくてね。レイフもアドリブが好きだし、とても通じやすくていい関係が築けたと思う。それに、撮影を担当したセザール(・シャローン)の仕事の仕方はものすごいのよ。カメラと一緒に走り回って、まるでルポルタージュのような雰囲気なの。私はとても気に入っているわ。とてもとても、とってもね! 何時間もかけるんじゃなくて、『ライトが欲しい』って言われたら、セザールは電球を持って走ってくる。あんなにすばやい仕事をする人は見たことがないわ! 官僚主義的なところは本当に見あたらなくて、カメラと俳優と電球がいくつかあるだけよ。もしかしたら空想的に見ているだけかもしれないけれど(笑)」

この作品の持つ社会的なメッセージについてはどう思う?

「もちろんそれも、この作品に惚れ込んだ理由のひとつよ。これは妄想の話なんかじゃなく、実際に起こっていることを反映しているんだから。私にとって、世の中の状況を語る役はこれが初めてだったの」

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