「全ての謎と罪を川が呑み込んでいく…」ミスティック・リバー bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
全ての謎と罪を川が呑み込んでいく…
今から20年の前に、ベストセラー小説を名優クイント・イーストウッドがメガホンを撮り、映画化したミステリ―・サスペンスの名作。少年時代にある事件に巻き込まれた幼馴染の3人の男達。その男達の運命が、25年後に起きた少女殺人事件によって再び交錯し、翻弄されていく物語。巧みなミスリードによって、最後まで飽きさせない展開は、流石にイーストウッドの作品と言える。
そして、本作の面白さと価値は、やはり名優たちの共演にもある。ジミー、ショーン、デイブの3人の幼馴染には、ショーン・ペン、ケビン・ベーコン、そしてティム・ロビンソンという名優達が、それぞれに異なった立ち位置で、個性ある役柄を凄味のある演技でみせている。特に、ショーン・ペンは娘を殺された父のジミーを、鬼気迫る演技でアカデミー主演男優賞にも輝き、ティム・ロビンソンも少年時代のトラウマに囚われた哀れな男・デイブを演じ、助演男優賞を受賞している。それだけでも本作の高い評価が垣間見れる。
また、ショーンの先輩刑事には、こうしたサスペンスでは名脇役を務めるローレンス・フィッシュバーンが、堅物な刑事役を演じ、デイブの妻には、こちらもミステリ―には欠かせないマーシャ・ゲイ・ハーゲンが演じている。そんな豪華な顔ぶれが、それぞれに個性が光る演技で、ミステリ―の世界観を高めている。。
少年時代、幼馴染の3人が遊んでいる所に、警察を名乗る見知らぬ男が現れ、その内の1人のデイブが連れ去られ、誘拐監禁される事件が起きる。何とか逃げ出したデイブだったが、その事件を契機に、3人の中は疎遠となり、25年の年月が経過する。そして再び事件は起こる。ジミーの娘・ケイティが惨殺死体で発見された。警官になったショーンは、先輩刑事と共に事件の捜査に関わる中で、犯人としてデイブへの容疑が高まっていく。三人の幼馴染が、被害者の遺族・刑事、容疑者となって、それぞれの思いや恨みが複雑に絡み合って物語は展開していく。
そして、最後に真実にたどり着いた時、それはあまりにもイヤミスな結末を迎えることになる。あの2時間の差が、交互に映し出されるシーンは、何とも言えない悲哀と愚かさを感じた。エンドロール前のパレードのシーンで、タイトルの『ミスティック・リバー』の本当の意味も。複雑な思い共にスッと落ちてくる。全ての謎と罪は、大河の中へと呑み込まれていったのだった。