「イーストウッド監督の描く『罪と罰』」ミスティック・リバー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
イーストウッド監督の描く『罪と罰』
2003年。クリント・イーストウッド監督作品。原作・デニス・ルヘイン。
ジミー(ショーン・ペン)ショーン(ケビン・ベーコン)
デイブ(ティム・ロビンス)の3人は幼なじみ。
その3人がデイブの誘拐事件から25年後、ある事件をキッカケに再会します。
ジミーの19歳の長女ケイティが殺されたのです。
ジミーは繁盛する食料品を経営する子煩悩で敬虔な父親です。
しかし犯罪歴があり2年間の服役経験がある男です。
背中に黒い十字架のタトゥーを背負っています。
娘のケイティの恋人ブランドンを毛嫌いしています。
恋人の父親ロイは遠い昔の不良仲間で、ロイは行方不明。
ケイティの殺人事件をキッカケにして、パンドラの箱は大きく開くことに・・・。
ジミーの娘が殺された、その夜デイブは血だらけで帰宅したのです。
そしてケイティの事件を担当するのは、殺人課の刑事になった幼なじみのショーン。
恋人ブランドンの父親ロイとジミーの深い関係。
ロイはジミーの犯罪を警察に密告した相手。
ジミーの2年間の服役後、ロイは忽然と姿を消しているのです。
ジミーがどんな男か、薄っすらと浮かんで来ます。
ジミーはモンスター。怪物なのです。
背中の十字架のタトゥーは凶々しい。
(とても神を信じる者の印には見えない)
そしてひとりの不幸な少年。
25年前に警官を装う男の車に乗せられて、4日間の虐待を受けたデイブ。
デイブはこの事件を忘れることも、乗り越えることも出来ずに大人になった。
見た目だけは大男だけれど中身は吸血鬼に怯える少年。
映画のラストに驚きます。
ノー天気にパレードの喧騒と、見物するジミーと妻。
デイブを探すデイブの妻。
車からジミーに指で射殺の真似をして笑うショーン。
『罪と罰』
まるで神になった気で、自ら邪魔者を裁く男ジミーの『罪と罰』
神に愛され過ぎて『罰+罰+罰』の幸薄き男デイブ。
世の中は絶対的に不公平だ。
罪なきか弱者に不平等な災厄が課せられる。
それが「原罪」なら、デイブは可哀想過ぎる。
デニス・レヘインの原作で、ジミーは雑貨店のオーナーではなく、
ギャング、として描かれている。
罪が償われないラストが重くて切ない。
2020年。天災が全世界を覆いました。
神が存在するなら、そしてこれが人類への「罪への罰」だとしたら、
その「罰」はあまりにも過酷で容赦ない。