ミュンヘンのレビュー・感想・評価
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【”テロにはテロを・・。”今作は、ミュンヘン五輪でのパレスチナ過激派によるイスラエル選手団殺害に対し、モサドがパレスチナ幹部を標的に報復していく様を恐ろしきも哀しきトーンで描いた作品である。】
■ミュンヘン・オリンピックでパレスチナゲリラ“黒い九月”がイスラエル選手団を襲撃し、コーチを含め11名が殺害される。
これを受けてイスラエル諜報機関モサドは”イスラエル政府が表向きは関与しない報復部隊”を組織する。リーダーのアヴナー(エリック・バナ)は妊娠中の妻を残してヨーロッパに渡り、”自動車のプロ”スティーヴ(ダニエル・クレイグ)、“掃除屋”カール(キアラン・ハインズ)、爆弾の”プロ”ロバート(マチュー・カソヴィッツ)”文書偽造の”ハンス(ハンス・ジシュラー)ら仲間たちと共に等犠牲になったイスラエル選手団と同じ11名のパレスチナ幹部を標的にし、次々に爆殺、射殺して行くが、ハニートラップに掛かったハンスが殺され、ロバートが爆殺され、彼らに協力していた謎のルイ(マチュー・アマルリック)からも、中断を警告され、アヴナーは徐々に疑心暗鬼になっていくのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、実に重い作品である。イスラエルのモサドに属していたアヴナーは、子供が生まれた時と、妻に再会したときのみ笑顔を浮かべるが、その他は終始沈痛な表情である。
一方、それに比して、イスラエル政府高官や彼らの上官エフライム(ジェフリー・ラッシュ)は、自らがテロを実行しないため、しばしば笑顔を浮かべ、テロの大義を語るのである。
■だが、観ていれば分かるが、テロリズムは大義などはない事を、スティーヴン・スピルバーグ監督は、冷徹にこの作品で描いているのである。
故に、今作が公開されてから、彼はイスラエル政府、パレスチナの両サイドから批判を浴びるのであるが、それはスティーヴン・スピルバーグ監督が、意図した結果であろう。
・常に沈痛な顔をしているアヴナーは、標的を仕留めても喜びの表情は一切見せない。逆に仲間が殺されて追い詰められていく過程で、ルイを疑い、自分達の存在意義を考えるのである。
・爆破シーンや射殺シーンなどの苛烈な描写も凄いが、これが半世紀前に実際に起こった事を描いている所が恐ろしいのである。空しく、哀しい気持ちになるのである。
<エンドロールに入る前、哀切な曲と共にワールドトレードセンターの2棟がロングショットで映し出される。これも、スティーヴン・スピルバーグ監督が意図した事である。
そして、この出来事から半世紀経った現代でも、イスラエルとパレスチナの終わらない紛争は続いているのである。
今作は、ミュンヘン五輪でのパレスチナ過激派によるイスラエル選手団殺害に対し、モサドがパレスチナ幹部を標的に報復していく様を恐ろしきも哀しきトーンで描いた作品であり、テロリズムの恐ろしさ、空しさ、哀しさ、終わらない負の連鎖を描いた作品なのである。>
実に優れたサスペンスであり、大いなる挑戦だと思う。
史実を基にしたサスペンス・ドラマだが、鑑賞前に、イスラエル・パレスチナ問題の基礎知識や、当時の時代背景を知ったほうが良いと思う。オランダ人女性ジャネット役は、マリ=ジョゼ・クローズやね。
黒い九月事件から、標的を1人づつ暗殺する報復作戦の過程は、実にスリリングで、見ごたえがある。しかし、一般人が巻き添えになる一方、更なる報復から、暗殺メンバーも、1人づつ殺される。
物語の軸は、暴力の連鎖だ。暴力は更なる暴力を招き、関係の無い人まで巻き込む。主人公は、疑問や葛藤を抱く。観客も、もどかしさを感じずにはいられない。
本作は、イスラエル・パレスチナ問題の余波を取り上げ、繰り返される暴力の無意味さを投げかけている。1つの映画で答えが出る問題では無いが、スピルバーグが観客に問いかけたこと自体が、大いなる挑戦だと評価したい。
難しい…
テロや暗殺を国家レベルで起こすことの理解は今作でもできなかった
永遠に理解不可能とは思うけども…
始まりの頃の実行時は主人公に躊躇の気持ちが表情で見て取れていたのが、仲間のカールの仇討ちではすっかり無くなっていた
こんな仕事やっていたら誰も信じられなくなるに決まってる
子供が生まれるというのによくやるなと思った
主人公の実在人物はその後も生き延びたらしいけれど…死ぬまで生きた心地しなさそうです
復讐すればまた復讐されるのは容易く想像できるのに、彼らを突き動かすものはいったい何なんだろうな
現在もある各地の戦争のニュースも思い出し、神様はこのような殺伐とした世の中でよく考えなさいと言ってるのかも
しかし毎回料理が豪華で大量で美味しそうでしたので、みていてお腹が空きました
オリンピック開催時に、実際に起こった大惨事を元にして作られた作品。...
ラストの最後の一言が重くのしかかる名作
ミュンヘンでの出来事を知っている人
は、もう案外少ないのかもしれない。
ミュンヘンオリンピックでイスラエルの選手、関係者11名が殺された事件だ。世界に衝撃を与えた。
この映画は事件そのものの話ではなく、その復讐の話である。
テロの犯人も、復讐する人たちも、普通の人であることに驚く。
先日のフェスティバルで殺されたシャニ・ニコル・ルークさんの写真を見たばかりだったので、今、起こっている出来事とも重なって見えた。
ダニエル・クレイグが若いのにビックリした。
追記
血塗られた手で子を抱く者は、いつか誰かに殺される。そして、その子はまた復讐者となるのだろう。憎しみの連鎖は永遠に終わらない。どちらかが死に絶えるまで。
ということですね。
スピルバーグ凄いです。
聖戦という名の狂気
実話とは思いたくないほど重すぎる
難しい問題
事実とはいつも残酷なものばかり
若者の義憤を利用して暗殺者に仕立て上げ、金以外は全く援助しない「無かった者」
今なお際限なく続くテロの残虐。生きて来た者が一瞬にして死体となる空しさ。報復が報復を呼び殺戮の成果を誇示するテロ。空爆だって同じだ。
目線を下げたカメラ、モノトーンのドキュメンタリータッチで鮮やかに描いたサスペンス・アクション。陰鬱な暗殺者を好演するエリック・バナに感情移入するほど気分が滅入ってくる。
親の功労をヨイショし、若者の義憤を利用して暗殺者に仕立て上げ、金以外は全く援助しない「無かった者」にされたあげく切り捨てられるのは国家優先のスパイと同じ。親の敵を求めて全国行脚、死んでいった武家時代もあった。
そして家族を持つテロリストはいつ襲ってくるか分からない恐怖に心を病んでゆく。第一次大戦のガスと塹壕、ベトナムのジャングル、アフガン・イラクの近代兵器と自爆テロ。劣化ウラン。ロシアの侵攻。戦場から帰った兵士に平穏な日常はおとずれない。
とはいえ平和であるべきミュンヘンオリンピックの選手村で、11人もの自国の若者の命が無惨に奪われて「ああそうですか」ではすまないだろう。だからこんな長くて短い映画ができた。
今回のワンシーンは、小部隊でテロ3人が女としけ込むアパートに踏み込み、撤退時に相手ガード部隊ともみくちゃになるまでの、夜の市街戦だろう。
ハッと顔が合い「パン!」と短銃の乾いた音がする絶妙な間と、空気を切り裂く鉛の滑空音。スピルバーグならではの熟練した手腕が緊張した場面の臨場感を盛り上げるベストシーンだった。
憎しみの連鎖
国民の存在を抹消して殺人者に仕立てあげる国家
西ドイツオリンピックでイスラエル選手団がテロによって殺害されたことは当時はあまりに子どもで全くわかっていなかった。その後パレスチナとイスラエル問題であることは知ったが報復が続いたことはこの映画で初めて知った。「シンドラーのリスト」は見ていないがこの映画ではどちらかに肩入れするということもなく、CIAやKGBも絡んでいるとかモサドは絶対入っているのに実働構成員は存在のない立場にさせられる。諜報機関の冷酷さと胡散臭さにぞっとした。
ドイツはイスラエルに優しすぎる、という言葉があったけれど、それは本当に仕方ないと思う。70年代頃だろうか、ドイツの若者(高校生?大学生?)が数週間か数カ月イスラエルのキブツに滞在して、という話はよく聞いた。農家に滞在して農作業をしたりなど。それがドイツのalternativeな生活様式にも影響与えたと思う。その「キブツ」もセリフの中にあってリアルさを感じた。
一方でヨーロッパ各地の多様な個性が映像によく出ていた。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、アラビア語、ヘブライ語(もあったかな?)、そして国や街の特性。フランス郊外は太陽光が柔らかく穏やかな自然、一方街ではジャン=ポール・ベルモンドの顔のポスターが円柱広告塔(リットファス・ゾイレ)に貼ってあった。オランダでは運河、移動は自転車。ロンドンでは雨降る夜の街。人を殺す男達は特に子どもや女性には注意するが、だんだん鈍感にならざるを得なくなる。そんな自分に絶望して自死を選ぶ仲間達を見て苦しむ。
バナが適役でとても良かった。静かで冷静な彼がだんだんと大胆に冷徹になり更に疑心暗鬼になり自分自身がベッドでなくクローゼットの中に寝るようになる。料理が上手でテーブルいっぱいの食事場面、自分の子どもが話せるようになってその声を電話で聞いて泣くバナ。若くて声も若々しい金髪ダニエル・クレイグ、青い瞳の美しいこと!そしてほんの少しだけれどブライプトロイ、テデスキとドイツ、イタリアの俳優も出ていて嬉しかった。ジョン・ウィリアムスの音楽に派手さはなくエンドロールに流れる音楽は悩みと苦しみと辛さと優しさが溢れていた。
プライベート・ライアンとは違い過ぎる
報復
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