「血で血を洗う」ミュンヘン めるさんの映画レビュー(感想・評価)
血で血を洗う
先日セプテンバー5を観に行ったので、その後の話を描いているということもあり鑑賞。スピルバーグ自身がユダヤ系ということもあり果たしてフェアなのか?と思いもしたが、報復措置を決して正当化するような内容にはなっていなかったと思う。
黒い9月によるテロ事件後、報復措置としてイスラエル政府は事件に関わった幹部の殺害を命じる。粛々と任務を遂行していく主人公たち。政府主導で報復や!と人殺しを命じる時点でこの民族間の歪みはますます大きくなっていく。目には目を、復讐には復讐を。流された血の報いは血を流して償ってもらうと。命令しているだけの政府は痛みを伴わないけれど、実行している人たちには確実に心のダメージが蓄積されていく。職務のために人を殺す。とても残酷な命令やと思う。
テロ行為は決して許されないが、劇中でパレスチナ人という男性がイスラエルに故郷を奪われたと訴えるシーンがある。自分たちが住んできた土地がイスラエルに奪われ居場所をなくしその気持ちが憎しみの連鎖へとつながっていく。人の数だけそれぞれの思いがありこの問題がいかに複雑で解決が難しいのか痛感する。
本題からは逸れるが、歴史の授業ってこういう事件がありました。ってただ、歴史の一ページとして習いがちやけど、その事件や出来事を背景にした争いが現在まで続いているというのはなんとも虚しい気持ちになる。学生時代に世界史を専攻していた私としてはその勉強していた当時にこういった映画を観れば良かったなと歴史を学ぶことの意味を考えさせられた。
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