「正義という名の報復行為」ミュンヘン h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
正義という名の報復行為
ユダヤ人であるS. Spielberg監督が72年のミュンヘンオリンピック事件後の諜報機関モサドの一連の報復行動を描いた作品。
1948年イスラエル建国にはじまる、イスラエル人とパレスチナ人の血で血を洗う闘争。日本映画の「仁義なき戦い」をイメージしたら分かりやすいかも(いわば「カナン」の地をめぐる縄張り争い)。
ミュンヘンオリンピック事件に関わった重要人物を次々に暗殺しても、新たな指導者が出てきてイスラエルへの報復活動を実行させる。それを受けイスラエルがさらに次の報復措置をとる。憎しみと恐怖の連鎖。これはもう「戦争」としか言いようがない。
イスラエル国家の安全保障のためには、暗殺も容認されうるという考え方がイスラエル政府や軍、モサドのなかに存在する。
「敵」を殲滅し、命をかけて守るべき祖国とは何なのか。帰れる祖国の地が無いという経験がない日本人には本当に理解できないことかもしれない。
ユダヤ人であるS. Spielbergは本作品において決してイスラエルの正義を訴えるわけではなく、一歩引いた視点でイスラエルの暗殺チームリーダーの精神的苦悩を描いている。
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