「狂った女の映画」マルホランド・ドライブ kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
狂った女の映画
初デヴィッド・リンチでしたが、噂通りキてました。狂っている、とポップな言葉で表現するよりも、精神病的な作家である、と表現したい。
本作はめちゃくちゃ面白かったです!切ない妄想映画でした。人間が持つあらゆる欲望が表現されているように感じます。
経済的に豊かでそれなりに名声もある親族に恵まれたい。困窮している愛する人をケアして、必要とされたい。実は才能もあって、その道の権威に評価され承認されたい…
さらに、アイツが主演を務めるのは、背後に誰かが糸を引いているからだ、という嫉妬からの陰謀論まで盛り込まれておりますからねぇ。
裏を返せば、夢を抱いてハリウッドまで来たものの、カネもコネも実力もないから何者にもなれずに転落していく人生が描かれていて、切ないのなんのって。妄想するしかないんですが、いくら逃げても終点ってものがありますからね。
終盤の展開は実に悲しくてやるせなかったです。あの、泣きながらのオナニーは本当に切ない。故・雨宮まみのエッセイを思い出し、なお切なくなってしまった。
本作は2時間半の長丁場でしたが、驚くほど飽きずに観れました。理由は、割と展開がスピーディーなのと、しょうもない小ネタが多いからだと考えます。
リンチのクソなセンスのギャグは相当好みですね。アダムが帰宅すると筋肉モリモリの間男が開き直っているところとか、殺し屋に誤射されたのに「ムシに刺された」と騒ぐデブのババァとか、やたらとためて勿体振る演出とか、ゲラゲラ笑いました。本筋とは関係ないじゃん。その無駄な感じが良いです。
はじめに出てきた爆笑しまくる老夫婦が、まさかあんな形で再登場するとは!まさに精神病的な作家にしか描けない表現。インパクトありました。
物語を牽引する主人公2人が美しくて良かったです。これも飽きずに観れた理由のひとつですね。
リサを演じたローラ・ハリングがエレガントでゴージャス、超セクシー。赤のインナーとかも最高に妖艶でした。ベティ演じるナオミ・ワッツも綺麗な人なので、視覚的に楽しめました