ロード・オブ・ザ・リング : 映画評論・批評
2002年2月15日更新
2022年9月16日よりグランドシネマサンシャイン池袋、TOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー
おみそれしました!すばらしい傑作
いや、おみそれしました。まさかピーター・ジャクソンにここまで凄い映画がとれるとは。これはもう、ファンタジー版の「スター・ウォーズ」。子供の頃はらはらどきどきわくわくしたあの世界が完璧に映像化されている。SW世界がSF少年の心のユートピアなら、四半世紀遅れで実現した「ロード・オブ・ザ・リング」はファンタジー愛好者のユートピア。天才とは思えない(それも1961年生まれの)おたく監督にこんな傑作が撮れてしまうんだから、世の中まだまだ希望はある。
とはいえ、原作が偉大すぎるだけに「指輪」おたく(とくに女子)の間からは不満の声も聞こえる。最大の問題は、ホビット特有ののんびりした時間感覚が切り捨てられて、後半はアクションまたアクションの連続になっちゃってること。「原作に忠実な映画化」と「『旅の仲間』を3時間以内の尺におさめる」という命題は明らかに矛盾してるんだから、3部作なんてケチくさいこと言わずに、いっそ6部作にしてほしかった。旅の仲間9人がそろって出発するところまでを2時間にまとめて第1部にすれば、柳じじいの話とかも入れられたのにね。と、思わずないものねだりの夢想に浸るほどすばらしい。傑作。
(大森望)