キング・コング : 映画評論・批評
2005年12月13日更新
2005年12月17日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
コミュニケーションと究極の“モンスター愛”を描いた傑作
コング vs T-レックスの大バトルに目頭が熱くなり(ちゃんとオリジナル通り、死んだことを何度も確認しているではないか!)、そのとき助けたアンを住処に連れて行き、青い空を茜色に染めあげる夕焼け(朝焼け?)にすでに涙がこぼれ、ラストのエンパイアステート・ビルの朝焼けにはもう滂沱(ぼうだ)。オリジナルも泣けるんだから、今回もとは覚悟していたが、まさかこれほどだとは!
そして思い出すのはジャック・ドリスコルが自らの戯曲のなかに込めてみた「言葉はいらない」というセリフ。オリジナルではほぼ一方通行だったコングの気持ちに、このPJ(ピーター・ジャクソン)版のアンは応えまくり。たとえ言葉が通じなくっても、ふたりの心は「孤独」(これもまたドリスコルの戯曲のタイトルだ)という感情で共鳴しあう。それはまたPJ(とVFXスタッフ)が、言葉をしゃべらないコングの気持ちを、彼の表情&仕草、そして瞳だけでわれわれ観客に見事に伝えてみせたことを意味しているのだ。
つまり「キング・コング」は愛の映画であり、コミュニケーションの映画。そして究極の“モンスター愛”に満ちた映画でもある。もし生きていたらウィリス・オブライエンも熱い拍手を送ってくれたにちがいない。
(渡辺麻紀)