劇場公開日 2025年2月28日

「起こっている出来事はシンプルなはずが押井節により難解そうに見える難物」イノセンス Ko Fuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0起こっている出来事はシンプルなはずが押井節により難解そうに見える難物

2025年3月1日
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イノセンスは最初見たとき小学高学年だったか中学生だったか曖昧だが、そのときは本当に何が何だか分からなった作品、としか思わなかったのだが、リマスターということで改めて観てみると意外とシンプルな内容。
事件の全貌も至って単純と言えば単純で、変態向けに発売したおもちゃの中身が違法まみれでヤバかったので強面のお巡りさんがやってきた、というそれだけのものである。事件の複雑さと理解しにくさでは前作のほうが圧倒的に上だろう。
この作品で大事なのは実のところ事件そのものではなく、それが引き起こされた経緯と、それによって生まれた被害者たち、そしてそれらによって提示された「人とは何か」「人はなぜ人形を作るのか」「人と人形の違いとはなにか」「魂とは」という哲学的、信仰的、人文学的な問いかけに対するキャラクター達の葛藤と苦悶。それを難解な台詞回しで転がされるため、なんだか難解な映画に見える。
押井作品全般がだいたいこんな感じなので(天使のたまごは別格だが……)、合わない人にはとことん合わないが、個人的には映像美と展開のスムーズさもあって好きな作品。

Ko Fu