劇場公開日 2007年2月3日

世界最速のインディアン : インタビュー

2007年2月2日更新

スピードに魅せられた男が“世界最速記録を打ち立てる”という40年越しの夢を叶えるために、ニュージーランドからアメリカへと渡り、感動的な冒険を繰り広げる姿を描いたロードムービー「世界最速のインディアン」。主役のバート・マンローを演じた名優アンソニー・ホプキンスとは「バウンティ/愛と反乱の航海」以来約20年ぶりのコラボレーションとなったベテラン職人ロジャー・ドナルドソン監督に話を聞いた。

ロジャー・ドナルドソン監督インタビュー
「彼は情熱が全身をおおっているような老人だった」

(佐藤睦雄)

“インディアン”とロジャー・ドナルドソン監督
“インディアン”とロジャー・ドナルドソン監督

──バート・モンローが一生を捧げるインディアンのバイクのようなものがあなたにあるとしたら、それはなんですか?

「残念ながらずっと持っているモノはないけど、カメラは大好きで、たくさんカメラを持っているよ。カメラは宝物だった。大切していたハッセルブラッドはもうなくなってしまったがね。アメリカに移り住んで、何万枚かのポジやネガを大切に保存して倉庫に預けていたんだが、数年前、その倉庫が火事になって残念なことに焼失してしまったんだ。最初に買ったハッセルブラットも、ライカも、ドキュメンタリー映画を撮っていたボーレックスのカメラも、それこそ全部のネガが燃えてしまったんだ。それ以来ショックで、あまりモノには執着しなくなった。今大切なのはありきたりだけど、私の家族になった」

──最初に買ったのは、ハッセルブラットだったのですか?

「ノー。イグザクター、ドイツ製のカメラだね。子供の頃、写真を撮って、写真日記をつけていたんだ。今でもその日記をたまに引っ張り出しては読んでいると、思い出すね、若い頃を。同時に親への不満や恨みつらみを書き連ねているんだが、若い頃はいかに自分中心だったか、今読むと恥ずかしい内容が書いてある。自分の親はさぞかし私を育てにくかっただろうと思うよ(笑)。今、親になってみると、自分の子供がときどき憎たらしく感じる時もある。でも、子供たちからわがままさを取り上げてしまったら、彼らはサバイブできないと思う」

60歳を過ぎても情熱を失わない バート・モンロー
60歳を過ぎても情熱を失わない バート・モンロー

──生前のバート・モンローさんにお会いになられていますね。バートさんから、とてつもないパッションを感じましたか? 現物のインディアンをご覧になって、どう思いましたか?

「当時、ぼくは30歳ぐらいだったかな。バイク狂のパートナーと映画の製作会社をつくって、コマーシャルのスチルカメラを撮って生活していたわけだ。その彼から、面白いバイカーがいるというんで紹介されたのが、バートだった。30年ぐらい前の話だけどね。彼と会って話してみると、とても面白い。じゃ、ドキュメンタリーをつくろうってことになった。ニュージーランドの南島の最南端にある彼が住む町へ通ったんだが、情熱が全身をおおっているような老人だった。もちろん、世界最速記録を出したというインディアンのバイクも見せてもらったんだが、50マイル(時速80キロ)も出そうもない、見るからにポンコツなバイクだった(笑)。はたして立つのかなぁ、という感じだったんだ。ところが、バートと海岸に行って、彼が走らせたら、ビックリ仰天さ。爆音を残して飛んでいったんだからね(笑)。すごく驚いた」

──彼のように60歳を過ぎても情熱を失わない姿勢について、どうお考えですか?

「素晴らしいことだと思う。私も60歳を過ぎてしまったんだが、たいていの場合、自分からくじけてしまうものさ。彼のように、絶対にあきらめない姿勢は大いに見習いたいと思うよ」

──世界的にどこの先進国も高齢化社会なわけですが、そういう意味で、この映画は“勇気”をくれますね。

「この映画はたぶん、お年を召した方にはなんらかの勇気をあたえるだろうし、若い方が見れば、父親や祖父たちを思い浮かべてくれる、いい機会をあたえるかもしれない。あらゆる世代にアピールできる映画になっているね」

インタビュー2 ~ロジャー・ドナルドソン監督インタビュー(2)
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