「マスコミの政治利用の凄まじさ、熱しやすく冷めやすい大衆、されど米国の民主主義を信じたい・信じられる」群衆 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
マスコミの政治利用の凄まじさ、熱しやすく冷めやすい大衆、されど米国の民主主義を信じたい・信じられる
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少々口惜しいが、最後見事に泣かされてしまった。
新聞がでっちあげで、隣人を愛せという草の根運動のヒーローを作り出す様は、今でもさもありなんで恐ろしいとともに、これを題材にする目の付け所がとても良い。
主人公ゲーリー・クーパーは、この運動の政治利用が分かって反抗するも、でっち上げがバラされ詐欺師裏切り者と攻撃されてしうまう展開が落差があってとても良い。誠実で裏表が無く、でっち上げ記事書いたヒロインのバーバラ・スタンウイックへの打ち明けられない恋心が、不器用に立ち振る舞うクーパーにはとてもお似合い。
バーバラ・スタンウイックも、有能でお金目的と自ら言うタイプの女性記者であるが、クーパーの誠実さに惹かれて愛していく様に意外と説得力が有る。また演説原稿作成に苦しんでいる時、亡き父親の手記をネタにして名演説を創作できたエピソードは興味深い。多くの人間が欲する様な、言葉にパワーが有るスピーチであった。キャプラ作品の常連、脚色のロバート・リスキンの力量が最大限に発揮か。
最後クリスマス夜のビルの屋上、ハッピーエンドは分かっていても泣かされる要素として、敵方集合及びヒロイン登場にプラスして、詐欺師と糾弾した一般人たちが飛び降りないでと訴えたことがある。移り気で頼りにならない群衆であるが、数は多く政治的パワーは有り、彼及び彼女らによる民主主義の威力をもう一度信じたい、信じることができるとの監督らの思いに涙が誘われる。マスコミの政治利用も凄まじいが、この時代(1941年公開)の米国の大衆、そして民主主義への信頼を羨ましくも思う。
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