「おぼえていること」グッドモーニング,ベトナム 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
おぼえていること
IMDBのランクをよく見るのだが、評価の高い映画が、じぶんにはぜんぜんだということが、たまにある。小市民なわたしはそれがけっこうくやしい。
とくに8点を超えている映画で、面白さがわかんないと、かなりくやしい。
その映画の皮相がかっこよかったりすると、さらにくやしい。
たとえばわたしには、ガイリッチーのロックストックとスナッチが、面白さがわかんない──というほどでないにせよ、弱い印象しかなくて、これがくやしい。
映画好きとしては、ロックストックとスナッチは、すげえ好きだと言いたい「かっこいい皮相」を持っているからだ。
こんなとき、わたしは日本映画なら、高評価でも、遠慮なく突撃する。
が、IMDBランクとその厖大な母数が裏付けている映画には、突撃しにくい。とうぜん、そういう映画には下げられる瑕疵が見つからないから──でもある。
映画好きには、しばしばこの手の歯ぎしりがおこるのだが、逆に、自分には面白くて、国内評価が低かったりすると、鼻高々になる。おろかものどもめ──という感じだろうか。
さっそく「おれは解っているんだぜアピール」の「評価が低くてびっくりしました」という書き出しでレビューするわけである。ほんとは、びっくりなんかしちゃいない。
当時とても話題になった映画だった。AFNの型破りなDJと、併せて表向き支援と正義で派兵したんだけど、じっさいはその国の人々と風土を荒らしている。──というアメリカの自省がある。
士気高揚のためのDJとしてクロンナウア上等兵(ロビンウィリアムズ)がサイゴン(現ホーチミン)の米軍放送網へ呼ばれる。
直属の上司がふたりいる。
ディッカーソン曹長は厳格でユーモアを解さず、クロンナウアを毛嫌いする。
ホーク少尉もジョークが通じない男だが、ジョークが解るふりをする。解らないのだが、それが解る人間であることを懸命にアピールする。
小者な感じが、すごく巧かった。
三人とも故人である。
映画レビューの、わからなさの歯ぎしりに、また、わかることの得意気に、グッドモーニングベトナムのホーク少尉(Bruno Kirby)を思い出すことがある。