「ストーリーが練り込み不足?展開にも無理があった」フライトプラン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーが練り込み不足?展開にも無理があった
ヒロイン・カイルが航空機の設計技術者で、機体の構造に詳しく、それ故に連れ去られた娘が貨物室に閉じ込められていることに、早い段階から彼女は確信を持っていたということが本作の「キモ」のようでしたけれども。
ただ本作の場合、実行犯によって彼女がターゲットにされるまでのストーリーにいささか無理があるようで、その点が、評論子的には、最後まで「減点要素」としてつきまとってしまいました。
飛行中の航空機内という、いわば「密室」で、忽然と愛娘の姿が消える―。
その舞台設定は、いわゆるクライム・サスペンスものとしては悪くはありませんし、別作品などで「潜水艦モノにハズレなし」などと世上で評されるのも、水上艦艇(水面に浮かぶ普通の船)などとは違って、狭い艦内のいわば「密室性」が雰囲気を盛り上げるからだとも思うのですけれども。
こと本作に関しては、「最初のボタンのかけちがえ」(最初のストーリー設定の無理)が作品全体のシズル感を殺してしまったようで。
カイル役のジョディ・フォスターの熱演も虚(むな)しく、評論子的には、残念な一本でした。
(追記)
本作は、原題も「FLIGHTPLAN」として、邦題と同じようですけれども。
評論子が寡聞にして知らないだけなのかも知れませんが、フライトプラン(flight plan)とは、航空機が飛行する際に、航空交通管制機関に提出する飛行計画書のことと理解していました。
Wikipediaによると、フライトプランには、出発時刻・経路・高度・速度・燃料搭載量・代替飛行場などが定められるとのこと。
それで、当機の機長が運航管制当局に提出したフライトプランに、何か機長が意図しないような細工が第三者によってなされて、その細工から巻き起こるクライム・サスペンスという予想で鑑賞を始めました。
しかし、本作のストーリーの組み立ては、そうではなかった。
その点で、いささか「羊頭狗肉」の誹(そし)りを本作は免れないだろうことも、減点要素として挙げておきたいと思います。
「ジョディ・フォスター3年ぶりの主演作」というインパクトが先走り過ぎて、ストーリーの練り込みを疎(おろそ)かにしてしまったと言ったら、それは厳しすぎるでしょうか。
(追記)
探偵小説(推理小説)の鉄則に、ヴァン・ダインの二十則というのがあり、その中に「探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない。」という原則があるようです。
本作にも真犯人の推理という要素があったとすれば、カーソン(本作のスカイ・マーシャル)の立ち位置は、どうなるのでしょうか。
ちなみに、日本のスカイ・マーシャル(航空機警乗警察官)については、「警察庁及び国土交通省としては、本決定を踏まえ、スカイ・マーシャルの円滑な実施を図ることとしています。なお、スカイ・マーシャルの運用の具体的内容等については、セキュリティ上の問題から、公表できませんので、ご理解ください。」(国土交通省HP)とのことで、機内でのその権限など、ネット上にも詳しい情報はないようです。
ただ、「スカイ・マーシャルの実施について」という平成16年12月10日付けの国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部決定(上掲で引用の中の「本決定」のこと)では、航空機警乗警察官は「航空機の飛行中におけるハイジャック犯の制止という…目的のため」に職務を執行するとありますので、日本のスカイマーシャルは、本作のような機内での誘拐事件については、捜査権限はどうやらなさそうで、日本に置き換えて考えた場合は、航空機警乗警察官は(ことジュリアに対する本作の機内誘拐事件に限っては)「捜査員」といえるかどうか、分からないと思います。