「なにについて?」華氏911 maruさんの映画レビュー(感想・評価)
なにについて?
アメリカ文化も政治のこともわからず、ただただマイケル・ムーアというクレイジーな監督が好きで、「ボウリング・フォー・コロンバイン」で未成年の銃乱射事件についてインタビューを受けたマリリン・マンソンの「おれを犯人にすれば簡単だからだ」という至極まっとうな意見を世間に広めて、アメリカ人に限らず、固定観念の怖さや視野の狭さの恐ろしさを訴え、鑑賞者の知見と見解を広げてくれた監督だから、観た本作。
トランプ大統領を主軸としながら、公害や銃社会、労働、あらゆる社会問題をくみ上げ、その主軸に絡ませながら見せていく。
しかしながら、アメリカ事情に疎い日本人としては、対岸の火事ではないが、何がどうトランプになることでどう作用するのかという「答え」は示されず、抽象的に「これでいいと思う?ダメじゃね?だめだろ」みたいな感じ。
シッコ=医療→が問題。
ボウリング…=銃→が問題。
だとしたら、華氏911=トランプ→が問題…のはずが、前述したようにいくつかの要素が絡んでくる。
なので、「トランプ(個人)」を問題にしてるのではなく、「○○大統領」を問題にしている。
なので、本当に「トランプが大統領になることで、問題①や②や③がどうなるでしょうか?」というようなストーリーにみえた。
マイケル・ムーア監督は、今回は、「問題提起」というより、「興味喚起」のために映画を作ったのかもしれない。
アメリカのことは知らないが、政治への関心が薄れたが故トランプになってしまい、関心が薄いと感じアメリカの民主主義の崩壊を感じたため、こういった映画を作らざる得なかった。
そんな感じもする。そういう姿勢で撮ってるのかな?…という見方で観ていくと、突撃取材の仕方もどこかしらソフトに見える。
もし、トランプ大統領の出現で、自国民の国民性やアイデンティティの危機感を感じ、作らざる得なかった映画だとしたら、トランプ大統領が現れなければ、アメリカの民主主義はもっとあぶなかったかもしれない。そういった意味でもトランプは、ヒーローか悪か。不謹慎だが、あーおもしろい。
映画最高。クリエイティブ最高。