華氏911 : インタビュー
マイケル・ムーア監督インタビュー
※前のページから続く
――選挙中の大統領候補を暗殺しようと狙う男を描いた「タクシードライバー」が1番好きな映画と聞いたんですが。
「『タクシードライバー』は2番目。1番好きな映画は『時計じかけのオレンジ』さ」
――どっちも暴力的な映画ですね。
「暴力的なんじゃなくて『暴力についての』映画だよ」
――将来、日本についての映画を撮る気はないですか?
「日本には僕よりもすごいドキュメンタリー映画作家がいるからなあ。僕はあの映画が大好きなんだ。『ゆきゆきて神軍』(87)は僕が生涯観た映画の中でも最高のドキュメンタリーだ」
――僕の友人が、「ゆきゆきて、神軍」の「続編」を撮ったんですよ。
「友人?」
――「ゆきゆきて神軍」の奥崎謙三さんは殺人で刑務所に入ったんです。上官を殺そうとして、その息子を射殺してしまって……。
「ああ、彼の戦友を食べた上官だろ」
――で、奥崎さんは数年前に刑期を終えて出所したんですが、僕の友人たちが映画に撮ったんですよ(藤原章監督「神様の愛い奴」)、出所祝いに奥崎さんにポルノ女優さんをあてがって、彼女とのカラミを。
「オー、神よ!(笑)」
――ところでひとつ疑問があるんですが、「華氏911」は、ブッシュがスピーチで格言を引用しようとして思い出せなくなって「Shame on you(恥を知れ)」と言うフッテージがオチになってますが、アカデミー賞授賞式であなたが「Mr. Bush, Shame on you!」と言ったのは、ブッシュのパロディだったんですか?
「……僕はこの3カ月間、世界中の100人ものジャーナリストのインタビューを受けてきた……。僕はそのことを質問されるのをずっと待っていた。でも、尋ねてくれたのは君だけだよ。ありがとう(ムーア、おもむろに立ち上がって頭を下げた)。ブッシュが自分で『Shame on you』と言っちゃってるビデオを見つけたとき、“『華氏911』のオチはこれだ!”と思ったんだ。抜群のオチだな、と思ってたけど、誰かに指摘してもらいたくてうずうずしてたんだ(笑)。感謝するよ」
――でも、僕は7月6日の記者会見でBullshit(牛のクソ、戯言)という言葉を使ったら、あなたに「正式な記者会見の席で下品な言葉を使うなよ」って叱られたんですよ。
「ああ(笑)。あれは冗談だよ。本気にするなよ。『ロスト・イン・トランスレーション』に出てくる日本人じゃあるまいし(笑)。I was fuckin' with you(ふざけてみただけだよ)。西海岸から来たなら、意味分かるだろ?(笑)」
――I know, dude(わかってるさ、ダンナ)(笑)。