劇場公開日 2007年3月11日

「『エクソシスト』では首が回るシーンが有名だが、この映画ではまるで中国雑技団によるイナバウアーのような決めポーズが印象に残る。」エミリー・ローズ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0『エクソシスト』では首が回るシーンが有名だが、この映画ではまるで中国雑技団によるイナバウアーのような決めポーズが印象に残る。

2018年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 悪魔が取り憑くのは深夜3時。草木も眠る丑三つ時である。被害者はエミリー・ローズ(ジェニファー・カーペンター)。最初は原因不明の痙攣と幻覚。医師もさじを投げてしまうほど症状だったが、薬によりなんとか改善が見られそうだったのですが、結局はエクソシストのムーア神父(トム・ウィルキンソン)に依頼し死なせてしまうことになり、過失致死罪に問われてしまう。

 ホラー映画というよりは法廷劇。悪魔の憑依による恐怖映像も流れますが、悪魔の存在をいかに証明するかが映画のテーマとなっています。初期症状である痙攣のシーンでは野村芳太郎監督の『震える舌』を思い出してしまいましたが、音響効果も素晴らしくて、ビク~ンっと体が硬直してしまいそうになりました。そして漫画チックでもあった『エクソシスト』よりもリアルさが溢れていて、やはり実話なのか?と信じてしまいそうになります(はっきりと結論づけたくないのです)。また、映画の中ではかなり脇役でしたが、エミリーのボーイフレンド、ジェイソンが彼女の家族とともに最後まで面倒を看ていたところが良かったです。

 裁判の結果は有罪。しかし、刑の執行は今日で終わりという執行猶予よりも甘い判決でした。陪審員も悪魔の存在を信じた結果として捉えてもよいのでしょうけど、エクソシストとしてカトリックの任務を全うしたムーア神父を評価しただけかもしれません。

 何しろ法廷において悪魔が存在すると認められたら、魔女裁判なども正当化されそうで危険です。司法と宗教というものが相容れないものであるから、悪魔が存在するなどという判例は作れないでしょう。しかし、宗教家としての職務であることも否定はできないので、映画としても結論はぼかしてあるように思えました。まだまだ議論の余地がありそうな問題ですね。

kossy