ソムのレビュー・感想・評価

全1件を表示

4.5実は僕も、むかしソムリエを夢見たので

2025年12月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ワインのマスター・ソムリエの試験に臨む4人を追うドキュメンタリー。
2012年 アメリカ、監督ジェイソン・ワイズ

切磋琢磨のライバルにして親友である3人=金髪のイアン、髭のブライアン、スキンヘッドのダスティンと、そしてもう一人孤高の黒人ソムリエ ディーリンの、
試験に賭ける日々。

当然彼らはすでに優秀なソムリエとして現役の働き手であり、ついには世界最高峰の「赤いバッジ」を目指すのであるが、
マスターは世界全体でも約300〜400人程度と非常に少なく、合格率は3〜8%の超難関資格とのこと。

◆その勉強法
◆各人のあふれ出すパーソナリティ
◆見守る家族へのインタビュー
◆そしてそれらを支える雲の上の存在=マスターたちの指導の様子と激励。

「ワインの世界」には不案内であっても、映画としての構成が優れており、ヒューマンドラマとしても鑑賞者にのめり込ませてくれる感動仕立てになっている。

つまり「4人のうちの誰に肩入れしたくなるか」・・我々はあの彼らの嘘のない姿にだんだんと捕らわれていくのだ。

音楽も良い。

日本ではお正月番組の定番となったあの「芸能人格付けチェック」が、視聴率も上々だ。
スターアイドルがワインの蘊蓄を垂れたり、素っ頓狂な判定を出すあの様子が はた目で見ていてもとても愉快なのだ。安いテーブルワインとグラン・クリュ(特級ワイン)の比べ飲みが、毎回ゲストに課される。あれが実に面白くて、毎年のお茶の間の話題になる。

だからワインを飲みつけていなくても
「ああいう世界」を画面越しにすでに知っていればこそ、本作で展開されているプロフェッショナルな壮絶な闘いにも我々は感心しきりだし、テレビでその雰囲気はかじっているから「置いてけぼり感」なく楽しめるはずだ。

・・

ディーリンが試験直前に鼻詰まりで調子を崩すシーンがあった。
僕もワイン醸造所に勤めていたのだが「花粉症」に悩まされた事が退職の一番大きな理由となった。外科手術を含めて八方手は尽くしたが。

また、昨年までの「3年間のコロナ禍」は、飲食業界に未曽有の震撼をもたらした ―
あのウイルスは、脳の内部にまで侵入して神経系に障害を起こし、嗅覚や味覚を侵す事が判明したからだ。
コロナの時代がソムリエたちをどれだけ苦しめたか、想像に難くない。

監督ジェイソン・ワイズ は「本シリーズ」をこのあとも数本撮り続ける。
本作の面々と再会できる続編=2015年の「ソム イン・トゥー・ザ・ボトル」も中々のものだ。
彼らが実際の現場で、どのような客を相手に働いているのかがレポートされていた。

(ただし「ソム イン・トゥー・ザ・ボトル」のほうでは最終章において「オサマ・ビンラディン殺害の祝杯」を、CIAの元長官や政府要人たちのためにセッティングする誇らしげなマスターソムリエがそこにおり、あの宴席の様子には、僕はせっかくの昇り気分を潰されてしまった。
たいへんに嫌な後味を喰らわされた)。

実力主義。そこはいかにもアメリカだ。

🍷🍷🍷🍷🍷

コメントする (0件)
共感した! 0件)
きりん