紅の豚のレビュー・感想・評価
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テレビでやっていたら見てしまう反射
自分で映像を入手してまで見ようとは思わないのに、テレビ放送でやっているのを見かけると、ついそのまま最後まで見入ってしまうという、「ジブリ現象」の最たるものだと思う。
鮮やかな色使いと、見事なカメラ割り、爽快感にあふれた飛行シーン、キャラクターの魅力、いろんな要素が奇跡的にマッチして、いまだに色褪せないファンタジー映画の傑作。
宮崎映画晩年の、現実世界との破綻を取り入れていった実験作でもあると思う。
粋な豚と空へ
もう何度見たかわからないが、歳をとるほどしっくりくるアニメ。
宮崎監督が、好きな飛行機を、メカを存分に動かしまくって楽しんでいるように思える。
子供の頃観たときは、豚が主人公でしかも空を飛ぶという、奇想天外な設定に驚いたが、あまり面白さがわからなかった。これは子供向けの作品ではない。大人向けの作品なのだから仕方がない。
監督は、飛行機を作る会社の一族として生れた。幼い頃から、身近に飛行機があった。この作品は、監督がずっと描きたかったものではないかと想像する。
天空の城ラピュタやハウルの動く城と同じ系譜の作品だと思うが、メッセージ性がほとんど感じられない。空を飛ぶことの素晴らしさ、面白さ、そして儚さ。観て感じたのはそういうことだ。
メカが、まるで生き物のよう。リアリティよりも、躍動感。アニメだからできる表現。宮崎駿の真骨頂。
そして、豚は去り際も美しい。こんなにカッコいい豚はいないぞ。
「飛べない豚はただの豚だ」は映画史に残る名言になったが、個人的には、ピッコロ親父の「さあ、モリモリ食べて、ビシバシ働くぞ」が気に入った。
カッコよくて、ちょっぴり切なくて、元気がでる映画。
さあ、明日もビシバシ働くぞ!
好きです✈︎空飛ぶ豚が
なんてロマン溢れる物語なんでしょう。
何度観ても、あの空を飛ぶ彼に憧れます。
ところでナゼ豚になった?
豚なら戦争に行かなくていい。
豚として気楽に生きたい。
幼馴染に告白するのが怖い。
謎は多い方が楽しみも長持ちします。
宮崎駿さんはこの作品にどんな意味を込めたのか?
大戦で友を亡くし、唯一生き残った彼の悲しみは、空を飛ぶことで解放されるのでしょうか?それとも、そこに近づくために飛ぶのでしょうか?友人の恋人から離れるためにわざと空の上に行こうとするのでしょうか?ハッピーエンドなのかどうか分からない結末に、観ているこちらも複雑な気持ちになりますが、あの弾け躍る様なフィオのセリフに、沢山の希望を届けてもらっています。
この「紅の豚」は、今からずっと昔の1992年に公開。不思議で壮大な世界ではなく、もしかしたら実際にあったかも知れない、そんな気にさせる物語。子供よりも上の年代なら虜になれるアニメとして色褪せないのは、大人のややこしい秘密のせいなのかも知れません。
青と赤の染みる映画。
大人だから好きですね。
※
シネマフェスティバルで
無人島にひとつ持って行くならコレかも
声優と音楽が最高!!
豚になった飛行機乗りの物語。
誘拐・強奪等悪さもするのだが、なんと気持ちの良い痛快な話なのだろう。
とはいえ、一歩間違えば、豚になった人間が主人公という際物ネタの子どもだましの映画にもなりかねない。
それを大人の鑑賞に堪えられるものにしているのが、声優と音楽。
森山周一郎氏とくれば『刑事コジャック』。
スキンヘッドでダンディな風貌の「ニューヨーク怒りの用心棒(『刑事コジャック』日本での本放送時のキャッチコピー)」。
その声が主人公のポルコ・ロッソを演じる。
第1次大戦が終わり、それでも続く貧困に、ファシズムが台頭してきてまた戦争が起こる予感が満載の時代。再び戦争に駆り出されることを嫌悪して、自身に”豚”になる魔法をかけたとされる主人公。選んだ仕事は空賊相手の賞金稼ぎ。「アドレア海の怒りの用心棒」を借景としてイメージさせる。
そんな主人公はクールでダンディに決めるときと、吹き出してしまうような時と。声はけっしてギャグをやっているのではないが、映像に現れる主人公の表情に笑わせてくれる。そしてそんなおかしみのある表情と声が乖離していない。なんてすごい。
マダム・ジーナを加藤登紀子さん。
学生運動が盛んだったころに、東大生であった加藤さん。その当時ご自身は演劇に熱中して学生運動とは距離を置いていたとはいえ、学生運動指導者の一人・藤本さんと獄中結婚をされるなど、しっかりとしたブレのないご自身の意思を貫いている女性。それでいて、喧嘩腰になるのではなく、しなやかさ、人や世界・社会への思いやりを忘れないで主張をしつづけている女性。
まさしくジーナさんそのもの。
ジーナさんが歌う歌も素晴らしいが、ジブリにしてはめずらしく、ジーナさんの口パクと言葉があっている。実際に加藤さんが歌う様をアニメーションにしたのだとか。とても気持ちよく、聴いていられる。
エンディングの歌は主人公やジーナさんたちの青年期の思い出を歌っているのだろう。だが、私には、映像等で知る、1960年代の学生たち。お金もなく、皆で狭い四畳半や路上に集まり、社会の理想を語り合っていた熱情への郷愁、そしてそれを知らぬ身には憧憬にも聞こえる。
マンマユート・ボスは上條さん。
とてもハマる!「仲間はずれにしたらかわいそうだろ」って、他の人を人質にしたらいいのに(笑)。声量豊かな歌手なのに、こんな三枚目がとてもうまい。
空賊連合の面々と言い、悪だくみをするが、最低限の人としての矜持は守っている。
そこに、カーティスとかフィオナが入ってきて、いつの間にかフィオナをめぐる決闘となって、しかもそれがお祭り騒ぎになってと、アニメらしい急展開(笑)。自分の意志と反した流れなのに、いろいろなしがらみ・思いに、しっかり巻き込まれていくポルコ。ハードボイルドなのに、ハードボイルドテイストではない。否、「タフでなければ生きていられない。優しくなければ生きていく資格はない」だから、ハードボイルドそのものの展開なのだけれど、このおかしみはなんなんだ(笑)。
ジーナを賭けると、お祭りじゃなくなるから、フィオナという落としどころが良い。ジーナとの賭けは、あくまで人の胸の中でひそやかにというのが、大人の嗜み。
こんな、軽いドタバタ劇だが、まったくのおとぎ話にはしていない。実際の歴史的社会背景はしっかり描かれている。
女性ばかりの工場。男は皆出稼ぎに行ってしまったから、女性しか働き手がいない。
元々家での仕事に従事していた女性が、戦争に行っていなくなった男性の代わりに外で働き始めたのが、女性が社会進出するきっかけになったとどこかで読んだ。たんなる女性賛歌のウーマンパワーを描いているわけではない。
台頭するファシズム。「国債を買って、祖国への忠誠を(思い出し引用)」。戦争へ突き進む国家・政治家。それを支える私たち。今、NISAやIdecoを政府が推し進めていることと、ついリンクしてしまう。怖い。投資先はきちんと選ばねば。
新しいものを作り上げる喜び。けれど、秘密警察からの疑いをそらさなければいけない。
第二次世界大戦と言えばナチスが有名だが、イタリアではムッソリーニによるファシズム政権。それらに対するレジスタンスに間違えられぬように過ごす、窮屈な日々。だが、そんな悲壮さよりも、ポルコたちの格好良さ・ユーモアや工場で働くおばちゃんパワーの方が心に残る。時代にまかれつつも、したたかに抗う強さ。
そして、フィオナにせがまれてしたポルコの話。
荘厳でもあるものの、取り残される寂しさ、喪失感、友の無念な気持ち、ジーナへの申し訳なさ。胸が締め付けられる。
もし、戦争がなければ、従軍していなければ、ジーナは幸せな結婚生活を送っていたのに…。
人に歴史あり。大人になればいろいろなことを背負っている。
それらの物語を彩る音楽。最高”。
暗い情勢をベースに、それでも、それだから日々自分らしく生きようとした人々。
ちょっと人生に疲れた時、そんな彼らに会いたくなる。
お祭り騒ぎの映画だけれど、沁みる大切な映画。
ひとつひとつのセリフが耳に残る。
「良いパイロットの条件はなに?」
「インスピレーションだな。」
おー、カッコイイ。
ハードボイルドなブタが終始良いセリフを吐くアニメーションだった。海!空!飛行機!と宮崎駿の「好きなもの」が結集していて、観客を強く映画に引き込んでいく。
飛行艇の動きはもちろん、波打つ海面やコップに注がれるワイン、そしてフィオのキスも、すべての動きが気持ちいい。
ただ、ポルコロッソ(赤い豚)って呼ばれ方はどうなん?ちょっと可哀想じゃない?
飛ばない豚は、ただの豚だ
ジブリ作品中最高傑作!
とあるライブで「さくらんぼの実るころ」を聴いたことから久しぶりに再鑑賞。あれ?こんなに良い映画だったっけ。下手したらラピュタの上を行くじゃん!なぜ豚?なぜイタリア、なぜファシスト政権下?などにほとんど説明がなされないところがまた良い。政治思想的な意図もあるのかもしれないがそんなのはさておき、見た目じゃない男のカッコ良さ、不器用さ、優しさが溢れてて泣きそうになる。飛行艇の発進シーンなどはメカオタクのこだわりがガンガンに込められている。街の風景もディテールの精緻さに懐かしの「赤毛のアン」を思い出しちまったぜ(ポルコ調)。ああプリンスエドワード島に本当に行きたかったなぁ…。宮崎さん、本当はこういう映画をいっぱい撮りたいんじゃないの?惜しむらくは幻のラストシーンが追加されてたら完璧だったかも。
言うまでもなく、
ジブリの中でも大人な一作。 観る度に魅力が増して、幼い頃の公開当時...
粋で洒落た、味わい深い大人のアニメ
大人のための飛行艇アニメ映画、最高傑作
実を言うと、初めての「紅の豚」だ。
正直いちばん好きなジブリ映画と言ってもいいくらいだ。
というか、単純に好みではある。
そして既に、なんて贅沢な時間だったろうと思い馳せている。
美しい街並み、風景、それに見合う音楽。
熟した大人たちだからこその、成熟した台詞。
それらと対照的なポップな色使い。全てが完成されている…。
この作品ほど、宮崎駿の天才っぷりを感じる事のできる作品は他にないと思う。
初めの、ジーナとのシーンがかなり秀逸だった。
ふたりは旧知の関係。
だからか、事実を直接言わない。
ジーナは話す。「私の伴侶となった人は3人とも死んだの」
ここでポルコロッソは初めて知る。彼の友人が死んだのだ。
そこに被せるように名台詞をはく。
「いい奴はみんな死ぬ」
これは、友人への言葉であり、ローザへの気遣いであり、自身の哀愁を象徴した台詞だ。
さらに「この店で気に食わないことが一つだけある、あの写真だ」と話し、彼の人間だった頃の写真が写り、魔法で豚になってしまったと知る。この無駄の一切ない流れ。大人になった二人にふさわしい構成だ。
かと思えば、「今にローストポークになっちゃうから」で笑えたりするからなあ。
それと、女ばかりの職場も何だか力強くて魅力的だったな。
ただ…フィオの感じは苦手だったな。
神聖な少女が出てきて、その為に男が拳で戦うなんて必要あるんすかね。
チューとかもうアウトでしょ。
にしても、ジーナの賭けとかいう締め方だったり、ポルコロッソの表情を唯一見た人間がカーチスだったりと、最後まで洒落ていて最高でした。
「飛ばねえ豚は、ただの豚だ」
「飛んだところで、豚は豚だぜ」
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