役者になったスパイのレビュー・感想・評価
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スイスにとってヤバかった1989年
原題は「モスクワ(行き)、片道(切符)」。
この意味は、映画のクライマックスまで行かないと分からない。
「スパイ」というと、他国に潜入、という先入観があるけど、
ここでは、政治警察が国民を監視する業務の一環。
舞台となった1989年のスイスでは、40年にわたり、
政治的に危険な可能性のある外国人と国民を監視してきたんである。
主人公ヴィクトールは、その真面目な一員。
とある劇場の上演メンバーが怪しい、という示唆を受けて、
なんやかんやあって、別人に扮しエキストラとしてその劇場に潜入することになる
――というのが「スパイ」の中身。
その後は、
潜入捜査+ラブコメ、って言っちゃうと
なんだかありがちな展開に聞こえるけど、
ちょっと待てよ。
政治的に危険な可能性のある人の監視って、
民主主義国家としては、かなりヤバくね?
そう、実は、1989年というこの年は、
ベルリンの壁が崩壊した年として有名だけれど、
スイスでは、史上最大とも言われるスキャンダルが発覚した年なんである。
しかも同時に、
初の女性大臣の失脚、
さらには、
「スイス軍を解散すべきか」という国民投票が行われるという
直接民主主義を標榜するスイスならではのイベントも重なり、
まさしく激動の年。
そういう歴史を背景に、
見かけを欺く役どころが多々登場するシェイクスピアの「十二夜」の上演を前景に
コミカルさも加えて展開される人間ドラマが、見もの。
いつバレるかとハラハラドキドキ、
クライマックスでは、
涙を禁じ得ず。
エンディングも爽やかで後味が良い
ベルリンの壁崩壊前後のスイスにおける連邦警察省による国民監視活動を描いたコメディ。
36年ほど前のスイスの「フィシュ・スキャンダル」について、私はこの映画を観るまで全く知らなかったです。
スイスは、国際的な金融の拠点(ブラック・マネーを含めた)の一つであり、歴史的には世界中に傭兵を輩出してきた国でもあって、複雑怪奇な欧州の中で、小国として生き残るために溜め込んできた外交的政治的な暗部は、相当根深いのだと想像します。
その重いテーマを、演劇界という狭い世界のコメディとして軽いタッチで描いたのは、物語として優れていると思いました。
エンディングも、爽やかで後味が良い。
スパイ物といってもアクション物ではなく、むしろロマンス系コメディ
1989年、冷戦末期、ベルリンの壁が崩壊する直前のチューリッヒを舞台に物語は始まる。そんな雪解けを背景に、スイスでは軍隊の廃止を問う国民投票が行われようとしていたが、中立と言いつつ反共を掲げていた政府が軍隊廃止論者や左翼的考えを持つ国民を秘密裏に監視対象として個人情報を収集していたことが発覚した1989年の「フィシュ(Fiche)スキャンダル」がもとになったコメディ作品だ。
なぜこんな過去のスキャンダルを引っ張り出してきたのだろうかと思ったが、本作が作られたのは2020年で、シリア難民の流入などによって2015年くらいから欧州各国における自国第一主義が加速し、右派ポピュリスト政党が急速に支持を伸ばし始めたという背景の中で、中央政府がいたずらに権力を収集化させることが民主主義を脅かしかねないという危機感があったのではないと推測される。
原題の意味は「モスクワへの片道切符!」で、スパイが国境を超えて派手なアクションを展開するかと思いきや、ほぼ警察署の中の部屋と劇場の中で、シェイクスピアの『十二夜』と現実が織り混ざりながら描かれる。
話の舞台が劇場になったのは、日本でも、自由民権運動に加担した川上音二郎だの、小山内薫らによる築地小劇場に代表される「新劇」などのように、(特に左派的な)イディオロギーの普及における大衆演劇の果たしてきた役割が決して小さくはないの同様に、割と自然な選択だったのではなかろうか。
まぁ、2020年なので、ひょっとするとコロナの影響で大々的なロケができなかったみたいな事情があった可能性もあるけれど……。
よくある設定だが、ラストの後味がいい作品
スイス映画でポリティカル・ロマンスコメディだが、1989年冷戦下のスイスの出来事だが、1989年のスイス社会も見事に描いていた。よくある設定だが、題名程緊迫感はない。風刺・ユーモアが見事。ラストも後味がいい。満足して映画館を後にできる作品。
バランスがいい
他人のふりをして目覚める
自分という存在
役者になったスパイ
無難な作品だった。
国民が監視され、政府へのデモ活動の疑いがある劇団に潜入した主人公が、そこで恋に落ち、友情を育みながら、自分という存在を見つけ確立しようとしていく物語である。物語自体に大きな驚きや新しさはなく、その過程をゆっくりと、丁寧に、そして優しく描いた作品だ。
ストーリーは平凡で、過去に似たテーマの作品も多く観てきたが、シェイクスピアの「十二夜」とリンクさせながら描かれる点は美しく、本作ならではの特徴といえる。
積極的に勧めたくなる作品ではないものの、気になっているのであれば観てみてもいい。少なくとも、退屈を強いられることはない作品だ。
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