ディパーテッド : 映画評論・批評
2007年1月9日更新
2007年1月20日よりサロンパス・ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にてロードショー
物語の魅力とは異なる、映画の醍醐味がこの作品にはある
「グッドフェローズ」以来、久々にホレボレするクライムストーリーだ。ワルとデカが互いに“ネズミ”(潜入者)を送り込んだことから悲劇を招く。筋立てはご存じ香港スリラー「インファナル・アフェア」の焼き直しだ。だが物語ばかり追いかけると見逃してしまう、映画の醍醐味がこの映画にはある。それは、独特のリズムとビートを刻む魔術的なカメラワーク(撮影)と、圧倒的な「プロテクション・ショット」から選ばれた神業のようなカッティング(編集)だ。いかにもスコセッシ映画らしい、カトリック的罪悪感やアイルランド系移民(マイノリティ)の叫びが通奏低音として響きあい、オリジナルとひと味違う。
ディカプリオもニコルソンも、スコセッシ好みの“重層的”でカラフルなキャラクターで、彼らの黒いアンサンブルが不気味なハーモニーを奏でる。また、ローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」、ピンク・フロイドの名曲「コンフォタブリー・ナム」(※)、ロイ・ブキャナンの超絶ギターにシビレる「スウィート・ドリームス」、ハワード・ショア作曲のタンゴ調テーマ曲(ドブロの旋律が最高)といったゴキゲンな音楽が人物をリズミカルに躍動させる。その1曲1曲に、映画的かつ音楽的“引用”がある。その秘密を知るとき、得体のしれない魔力に襲われるのだ。
(※)劇中で使用されるのは、ロジャー・ウォーターズ、バン・モリソン、ザ・バンドによるライブ録音盤「The Wall Live In Berlin」のもの。
(サトウムツオ)