配信開始日 2025年11月20日

「『羅生門』方式を用いない事実の集積が、観る者をかえって混乱させる考えさせる系の作品」アフター・ザ・ハント とぽとぽ2(仮)@元アカウント入れるようになるまでさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 『羅生門』方式を用いない事実の集積が、観る者をかえって混乱させる考えさせる系の作品

2025年12月5日
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鑑賞方法:VOD

性、世代、人種、そして経済格差…。自分の行いを気づかせる"他者"を、"特別な他者"と認めることなく(=距離を置いてなお自分の過ちを認めず?)、二元論では収まらない現実社会。偏見に満ちた世論が未だに世の中に渦巻いているのだから、社会倫理は幻想。どんなに本を読んで賢い人も、自分のこととなると?
女が声を上げたら損をするから黙ってろ?たとえ男が逃げ切っても。間違った社会に正しい生き方は存在しない。ルカ・グァダニーノは、いつだって奇妙な作風で性を描く。そして、性加害・暴力は上から下へと力の関係によって起こる。…だけど、本作に関しては、曖昧に問いかけてくる。マギーがイェール大学の像(?)を見つめる意味深カットが印象的だった。
時を刻む時計の秒針の音に、やたらと主張してくる音楽が、従来のこうした題材やトーンの作品から本作を良くも悪くも隔てていた。客寄せパンダになり得るような分かりやすく挑発的な部分を抑えて曖昧にすることで、考えさせるようなハイコンテクストで噛み応え・考え甲斐のある作品にしている(あるいは、そうした作品を目指している)。真実は…?
妻を気にかけるも音楽を聴くときは大音量の夫フレデリック役にマイケル・スタールバーグで、彼は同じくルカ・グァダニーノ監督『君の名前で僕を呼んで』で最後に素晴らしい語りで観客の心を鷲掴みにするような作品の核を担ったわけで、本作でもその役を一部引き受けていた気がした。「それでも子どもの純真さを守るのは、いつだって大人の役割だ」
ジュリア・ロバーツはその名優っぷりを遺憾無く発揮し、アンドリュー・ガーフィールドはノリノリに軽薄な問題准教授役を好演している。彼は、『大いなる陰謀』でロバート・レッドフォード教授の教え子として大学生役を演じていたところから知ったから、准教授役になったことには時の流れを感じる。演じている役は、レッドフォードの素晴らしい教授とは雲泥の差だが。飲まない?飲もう。奢ってくれがちな主人公アルマはブロンドだし、自分の中でケイト・ブランシェット姐さんが思い出された。…からのアルマのハンク化?ビンタされても当然の報い。
『ボトムス』と『The Bear 一流シェフのファミリーレストラン』から好きになったアヨ・エデビリ(アイオウ・エディバリー)も見事で、印象的だった。作り物みたいな最後がハッピーエンドかは…。作中で、"夢が叶ったり望んだものが手に入ったりしたら満足できるのか?何が待っている(どうなる)のか?"みたいな話があったけど、タイトルの「狩りの後」というのもそういうことを意味しているのだろうなと思った。

「他者が語るのを聞いてはじめて自分が英雄だと気づく」

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