配信開始日 2025年11月20日

「ルカ・グァダニーノがまたも描く欲望の果て」アフター・ザ・ハント 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 ルカ・グァダニーノがまたも描く欲望の果て

2025年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

2019年にアメリカの名門大学、イェールで(起きたこと)。そんな文字で始まる本作は、同校の哲学教授である主人公のアルマ(ジュリア・ロバーツ)が、学内で起きたアルマの同僚、ハンク(アンドリュー・ガーフィールド)にまつわる性的暴行疑惑と、アルマ自身が過去に犯した罪とを徐々にリンクさせて、捻れた人間の本性を静かに炙り出していく。従ってこれを心理ミステリーにカテゴライズすることも可能だろう。

名門キャンパス内にほぼ限定した舞台設定とか、抑制されたタッチはルカ・グァダニーノらしくないと感じるかもしれないが、さにあらず。人間が一度欲望の表現方法を間違えると、振り切れすぎると、とんでもないしっぺ返しを喰らうというストーリー展開は、明らかに過去のグァダニーノ作品を想起させるもの。まして、規則に縛られた名門大学内の話なので、アイロニーは増し増しになるというわけだ。なので、ハンクを告発する学生、マギーの行動から#MeTooを連想するのは少し違うと思う。むしろ、最初のボタンを掛け違えたばかりに病を煩うことになるアルマの現状に作品のテーマが集約されているのではないだろうか。

にしても、ルカ・グァダニーノは実に神出鬼没。本作の後には『君の名前で僕を呼んで』の続編を含めて合計4本の新作が待機中だが、その中にはルーニー・マーラがオードリー・ヘプバーンを演じるオードリーの伝記映画も、ハリウッドに実在した売春斡旋人の仕事とその周辺を描いた実録ドラマ(脚本はセス・ローゲンが担当するはず)も含まれてない。あれはいったいどうなっているのだろうか?

清藤秀人