「3つの“忘却”が紡ぐ奇縁」春の木 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
3つの“忘却”が紡ぐ奇縁
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役者としての夢破れた女性が故郷に戻り、子役時代の恩師に再会するも…
地元の方言を忘れてしまった元女優と認知症となってしまった恩師。“忘却”が紡ぐ奇縁を描くが、実は映画への“忘却”もある。地元にある閉鎖された映画撮影所が取り壊しが決まっている。撮影所が無くなれば、そこで映画を撮っていた人々の思いや情熱までもが“忘却”してしまう。実は本作監督が一番腐心したのは、その撮影所を使って最後の作品を撮る事で、使用許可が下りてから脚本を書いたそう。
お話自体は、これといって大きな出来事や劇的展開は起こらない。普通なら「つまらない」と一刀両断してしまうのだが、本作は何故かそうならなかった。元女優と恩師の息子との微妙な関係が、観ていてなんとなくの心地良さを感じた。
セリフに関しては、喋っている言語が北京語なのか成都方言なのかを字幕で明記している。表現のニュアンスの違いを補足しているのだけど、中国語に詳しくない人(喋れない人)にしか伝わらないだろう。実際、劇場では中国人らしき観客から笑い声が起こっていたし。
ラストは一応団円なんだろうけど、無言でピアノの音階を繰り返すあたりになんとなく不穏さを感じた。でもそれもなんか良かった。
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