「設定構成の段階で「行先が決まっていない舟」を作り、なす術もなく暗礁に乗り上げてしまった感じになっている」悪魔祓い株式会社 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
設定構成の段階で「行先が決まっていない舟」を作り、なす術もなく暗礁に乗り上げてしまった感じになっている
2025.12.18 字幕 MOVIX京都
2025年の韓国映画(92分、G)
拳で悪魔を祓える男と正統な退魔師のチームを描いたアクション映画
監督&脚本はイム・デヒ
原題は『거룩한 밤: 데몬 헌터스』、英題は『Holy Night: Demon Hunters』で、ともに「聖なる夜:デーモンハンターズ」という意味
物語の舞台は、現代の韓国・ソウル
大主教と呼ばれる謎の存在によって混乱する街にて、「悪魔祓い株式会社」を経営している一団がいた
代表は悪魔を殴って倒せる巨漢のバウ(マ・ドンソク、幼少期:イ・ジェイ)で、彼に助けられた過去を持つ能力者シャロン(ソヒョン)とキム・ジュン(イ・ダヴィット)で構成されていた
シャロンは悪魔を感知することができ、「駆魔」の儀を執り行うことができた
キムは専ら彼らのサポートをしつつ、儀式の記録を行なっていたが、なかなかうまくPR動画を作ることはできなかった
彼らの元には、チェ刑事(リュ・スンス)が案件を持ち込んでいて、3人は依頼人の元に出向いて、憑依者の駆魔を行なっていく
だが、バウは唯一「この男の依頼だけは受けない」と心に決めていた
それが、かつて孤児院時代の親友ジョセフ(キム・イエギョム、成人期:ファン・デヒョン)を悪魔に売り渡したマルコ神父(チェ・グァンイル、若年期:キム・ソンドン)で、バウはマルコ神父のせいでジョセフがルシファーに取り憑かれていると考えていたからだった
物語は、そんな遺恨の相手マルコ神父からある依頼が舞い込むところから動き出す
精神科医ジョンウォン(キョン・ソジン)の妹ウンソ(ジョンソ)の案件だったが、当初はマルコ神父の依頼だとして断ったものの、悪魔に対して許し難い感情を持つ3人は、その依頼を受けることになった
ウンソは5年前に母親が他界してからおかしくなったとされていて、ジョンウォンが彼女の監視をしながら治療にあたっていた
だが、原因はわからないまま時は過ぎ、そんな彼女にマルコ神父が助け舟を出していた
マルコ神父は「私を許せなくても良いから彼女たちを救ってほしい」と頭を下げるである
映画は、悪魔の力を宿しているバウとシャロンが共闘するというバディもののようでいて、シャロンの覚醒の物語にも見えてくる
かつて、バウが悪魔崇拝者たちと同じような立ち位置にいたことは仄めかされるが、どうやってそのゾーンから抜け出したのかはわからない
マルコ神父はバウとジョセフのいた施設で彼らの面倒を観ていた経緯があり、その時にアンジェラというシスターの世話になっていた
そしてその後、バウは悪魔を退治する側になって、シャロンとキム、カタリーナ(チョ・インニョン)を救うことになった
修道女のカタリーナに資金援助を行なって、アンジェラ養護施設を支えているのがバウであり、彼の行動の源泉にはかつての悪魔との軋轢というものが存在している
だが、映画では多くを語ることはなく、あくまでもシリーズ化を見据えたプロジェクトの入門編のような立ち位置となっていた
この構成だと、実はキムも隠された能力者という「チーム」のパターンと、バウとシャロンの因果を巡る「バディ」のパターン、さらにはバウとシャロンの覚醒を描くパターンというものを生み出すことができる
どの路線を行くのかが決まっていない段階で発車している感じがして、バウよりはシャロンの方が主人公のようにも思える
そのあたりの匙加減が意外とノイズになっていて、それが物語のピークを明確にさせていない要因となっていた
物語の構成としては、シャロンが主人公で、メンター的役割がバウというのがしっくり来るのだが、悪魔を殴るという能力と確かな駆魔をする能力を同時並行させる方が物語の深まりは整うように思えた
いずれにせよ、良くあるタイプの悪魔系の物語で、サプライズっぽいものはほとんどなかった
唯一の見どころは、バウが殴ったら悪魔が体から抜け出して消えていくという部分で、この能力をもっと活かした方が良かったのだろう
儀式では「存在」「偽装」「休止」「声」「衝突」「追放」という流れを汲むのだが、この追放に関してバウの拳が必要というふうに構成した方が良いだろう
その上で、モレクには通用せずに、隠された第三の眼としてのキムの覚醒が必要だったように思う
そう言った意味において、もう少し面白くできたのになあ、と感じた
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