「キャラ造形が曖昧で、行動原理も意味不明なのだが、母親が戦犯ということだけはわかる」ピアス 刺心 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラ造形が曖昧で、行動原理も意味不明なのだが、母親が戦犯ということだけはわかる
2025.12.11 字幕 アップリンク京都
2024年のシンガポール&台湾&ポーランド合作の映画(106分、G)
服役中の兄と再会することになった弟を描いた青春映画
監督&脚本はネリシア・ロウ
原題は『刺心切骨』で「心を突き刺すような痛み」、英題は『Pierce』で「突き刺す」という意味
物語の舞台は、台湾の台北
フェンシングに勤しんでいる中学生のジージエ(リウ・シウフー)は、代表に選ばれるほどの実力はなかったが、ずっとそれを続けてきた
彼にはフェンシングの試合にて、相手選手を殺してしまった罪で少年院に入っている兄・ジーハン(ツァオ・ヨウニン)がいて、彼の刑期はまだまだ残っていた
幼い頃に川で溺れたジージエは、兄に助けられたことがあったのだが、そのことについての記憶は曖昧で、母アイリン(ディン・ニン)はジージエとは違った認識をしていた
ある日のこと、刑務所からの電話に出たジージエは、兄が出所すると聞いて動揺してしまう
母は兄の出所をジージエには内緒にしていて、遠くの街に行かせようとしていた
だが、ジーハンは地元で暮らしたいと考えていて、なんとか金を工面しようとしていた
物語は、兄の真実に揺れる弟が描かれ、多くのことが起きて疑心暗鬼になる様子を描いていく
だが、本当のところはわからないままで、ジージエは数々の事象を元に「兄は犯罪者だ」と断罪することになった
そして、弟に見放されたことで兄が蛮行を起こすという流れになっているのだが、この一連のシークエンスがどうして起こったのかというのは正直なところわからない
自暴自棄になったのか、あれが彼の本性だったのか
幼少期の川において、すぐに助けられなかったのは、見殺しにしようと思ったからではなく、精神的な圧迫が強すぎると処理しきれないからのように思える
なので、母親が感じていたことは誤りであり、それが連鎖的な悪循環を生み出したことで、彼女にとっての最悪の時間というものを生み出すことになった
兄弟を信じることができなかった故の結末であるが、それでも一人の女性として受け入れられるのだから、人生というものはわからないものなんだなと思った
いずれにせよ、かなり退屈な構成になっていて、兄と弟の軋轢の解消というメインテーマの割には、その核心的なところにはふれていないようにも見える
幼少期の回想を思い起こす中で、大人になった兄が弟を助けるシーンで終わりを告げるのだが、それによって兄弟の何かが変わることはない
それゆえに、観賞後感は救いが全くないまま終わってしまったので、もうちょっと何とかならなかったのかな、と思った
