「新旧が噛み合った緻密な設計」シャドウズ・エッジ 暁の空さんの映画レビュー(感想・評価)
新旧が噛み合った緻密な設計
香港映画は、まだ“娯楽”を信じている。という事実を快活に証明する一本。
まず特筆すべきは、新旧役者の噛み合い方が驚くほど精密である点。単なる世代交代でも、ノスタルジー消費でもない。ベテランが「過去の遺産」として置かれず、若手が「勢い要員」に堕していない。互いの欠点と強度が、同一フレーム内で機能するよう設計されている。脚本・演出レベルで、世代差をドラマの推進力する意図が明確にあるように感じる。
その設計思想は、捜査方法の新旧対比にもそのまま反映されている。
身体性と勘、現場で積み上げた“経験のアルゴリズム” とAIによる データ解析と即時性。どちらかが優位に描かれることはない。むしろ、本作が描くのは「どちらか一方では決定打にならない現代」という現実。だからこそ新旧が噛み合った瞬間にのみ突破口が生まれる。その構造自体が、物語のカタルシスになっている。
そして何より、ジャッキー・チェンが元気!
ここに余計な修辞は不要。アクションの質云々ではない。「スクリーンに立ち続けている」という事実そのものが、香港映画の現在進行形を象徴している。彼はもはやレジェンドではなく、現役の一部として物語に組み込まれている。それが本作の強度を一段引き上げている。
エンタメの詰め合わせでありながら、人物造形は驚くほど誠実。テンポは速いが雑ではない。だからこそ、続編を匂わせるラストも商業的都合ではなく、物語的必然として受け取れる。期待したい。
そして今年、『トワイライト・ウォリアーズ』に続き、本作。
香港映画は今、過去を反芻するフェーズを終え、「どう更新するか」を本気で模索し、その答えを娯楽として提示できている気がしてならない。
香港映画は、今年たまたま当たり年だったのか?
いや再び「当たり前に面白い時代」へ復活した年だと信じたい。
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