「市井の人々に焦点を当てた記録映像」最初の年 民意が生んだ、社会主義アジェンデ政権 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 市井の人々に焦点を当てた記録映像

2025年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本ではあまりなじみがない南米の歴史を知る貴重な映像。タイトルが示すとおり、社会主義政権アジェンデ政権成立の年の記録でもあることから、ややアジェンデ政権のプロパガンダ的な側面もあるが、社会主義政権の発足によって今まで米国企業が占有していた産業分野が国有化され、特に炭鉱などの過酷な職場環境が改善されるなど、多くの人がこの政権に希望を抱いていたのは間違いない。本作の多くは市井の人々に焦点が当てられ、当時を生きた人々の生の声を聞くことができる。

富裕層の豪奢な屋敷と対象に、土地を奪われ搾取される先住民族マプチェの「本来、我々こそがチリ人ではないか」という切実な訴え。
社会主義の発足によって労働状況が改善することを期待する炭鉱労働者。スーパーでの品薄を嘆く主婦。
キューバとの国交樹立によってカストロの訪問に熱狂する人々(それにしてもカストロの演説が上手い)。

チリの歴史を知っていれば73年のクーデターによってアジェンデは悲惨な最期を遂げ、その後ピノチェトによる軍事独裁政権が敷かれることになるのでチリの夜明けはまだまだ遠いので何とも苦い気持ちになる。
監督もクーデター煮より投獄され、この映画のフィルム自体、クーデターによって散逸し、監督による半世紀もの修復作業を経て2023年にようやくレストア版が公開された。(ちなみに、ピノチェト政権の是非を問う国民選挙において、独裁政権にNOを突きつけるため、ごく限られた放送枠でいかにCMを打ち出すかを描いた映画「NO」も是非機会があれば見て欲しい。)

パトリシオ・グスマン監督の映画も日本で上映されているのはほんの一部だが、いずれ残りの作品も上映・配信されることを願う。

Jax