最初の年 民意が生んだ、社会主義アジェンデ政権

劇場公開日:2025年11月14日

解説・あらすじ

「チリの闘い」3部作や「光のノスタルジア」といったドキュメンタリー作品で知られるチリの巨匠パトリシオ・グスマンが、1972年に発表した長編監督デビュー作。

1970年、南米チリで史上初めて選挙により選ばれた社会主義大統領サルバドール・アジェンデが誕生し、国家規模の社会変革が始まった。その政権発足から1年間にわたる激動のプロセスを、国民の視点から丹念に描く。グスマン監督は鉱山、農村、港、都市、学校などさまざまな場所で人々の声を記録し、政府の政策が生活にもたらす影響や民衆の高揚感、変革への参加意識などを、希望とエネルギーに満ちた映像で映し出していく。その一方で、既存の権力構造との軋轢や、経済的混乱、政治的不安定といった不穏な兆しにもカメラを向ける。

本作は1973年にチリで発生した軍事クーデター後に多くのプリントが失われ幻の作品となっていたが、グスマン監督監修による半世紀に及ぶ修復作業を経てよみがえり、2023年9月にニューヨークのアンソロジー・フィルム・アーカイブスにて2Kレストア版が世界初上映された。日本では2025年11月に劇場初公開。

1972年製作/96分/G/チリ
原題または英題:El primer año
配給:アップリンク
劇場公開日:2025年11月14日

スタッフ・キャスト

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(C)1972 Patricio Guzmán/2K restoration and digitization with the support of the CNC (French National Centre of Cinema)

映画レビュー

3.5 市井の人々に焦点を当てた記録映像

2025年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本ではあまりなじみがない南米の歴史を知る貴重な映像。タイトルが示すとおり、社会主義政権アジェンデ政権成立の年の記録でもあることから、ややアジェンデ政権のプロパガンダ的な側面もあるが、社会主義政権の発足によって今まで米国企業が占有していた産業分野が国有化され、特に炭鉱などの過酷な職場環境が改善されるなど、多くの人がこの政権に希望を抱いていたのは間違いない。本作の多くは市井の人々に焦点が当てられ、当時を生きた人々の生の声を聞くことができる。

富裕層の豪奢な屋敷と対象に、土地を奪われ搾取される先住民族マプチェの「本来、我々こそがチリ人ではないか」という切実な訴え。
社会主義の発足によって労働状況が改善することを期待する炭鉱労働者。スーパーでの品薄を嘆く主婦。
キューバとの国交樹立によってカストロの訪問に熱狂する人々(それにしてもカストロの演説が上手い)。

チリの歴史を知っていれば73年のクーデターによってアジェンデは悲惨な最期を遂げ、その後ピノチェトによる軍事独裁政権が敷かれることになるのでチリの夜明けはまだまだ遠いので何とも苦い気持ちになる。
監督もクーデター煮より投獄され、この映画のフィルム自体、クーデターによって散逸し、監督による半世紀もの修復作業を経て2023年にようやくレストア版が公開された。(ちなみに、ピノチェト政権の是非を問う国民選挙において、独裁政権にNOを突きつけるため、ごく限られた放送枠でいかにCMを打ち出すかを描いた映画「NO」も是非機会があれば見て欲しい。)

パトリシオ・グスマン監督の映画も日本で上映されているのはほんの一部だが、いずれ残りの作品も上映・配信されることを願う。

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Jax

4.0 貴重な映像ばかり。南米を知る上で貴重なドキュメント

2025年11月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

驚く

貴重な映像ばかりで観ごたえがあったドキュメントだった。チリはピノチェト軍事独裁とサッカーしかイメージがなかったが、ピノチェト前のチリの映像やキューバのカストロがチリを訪問した時の映像が貴重で観る事ができて良かった。異国を知る事がいかに大事か改めて思い知らされた。この作品の監督は昨年末観た私を想う国以来だが、個人的には私を想う国を好む。

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ナベさん

3.5 この歴史を刮目せよ!

2025年11月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

アメリカと既得権益により続いた搾取。
それと闘い労働環境改善や社会保障を勝ち取り、国内財を享受しようとする民衆。そこには希望とパワーが漲る。

一方今の日本。低賃金や税金と社会保障費で搾取された国民の財を、既得権益に分配しアメリカへと貢ぐ政官。それはトランプの出現により加速している。

この映画に記録されたチリの状況の歴史。今の日本ではその逆回しが起きているように思える。

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xa

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