「何とも言えない悲しみと希望が混在」落下の王国 4Kデジタルリマスター ころさんの映画レビュー(感想・評価)
何とも言えない悲しみと希望が混在
映像の美しさ、物語の力、複層的な物語構造、映画への敬意、——どれをとっても素晴らしかった。
最初は、スタントマンへの敬意と追悼の作品だと思っていた。
だが、最後に病院で映画が上映される場面を見て、少し戸惑いを覚えた。
映画というフィクションの力を信じていることは確かだ。しかし、その背後には死屍累々の悲劇がある。
ロイが穏やかに映画を見つめる姿は祝福なのか、諦念なのか少し困惑してしまう。
その困惑ごと、この作品の素晴らしさだと思う。
映像の美しさ
忘れがたい場面はいくつもある。
特に印象的だったのは、輿から少年、花嫁、司祭が姿を現すシーンだ。
奴隷が引く輿、奴隷が解放され前方方向へと散っていった後、その逆方向から現れる三人の姿は、色彩も美しい。
金の衣の少年、赤い衣の成年、白い衣の老人——人の一生がこぼれ落ちてくるようである。
「赤い成年」が直線から逸れていくのもまた象徴的である。
また、老人は悪から善へと変容するが、この語り手と聞き手がそっと物語へ入り込む瞬間にも驚かされるのだが、心地よい驚きだった。
迫害される移民
アレクサンドラが自分のお腹に蝶を描く場面がある。
この“幻の蝶”は彼女自身の変容の象徴だろう。
お腹は彼女の心と同質で、アメリカーナ・エキゾティカは美しく変容する彼女の姿。
静かな希望を感じさせるシーンだった。
生命のやりとり
アレクサンドラは迫害によって父を失い、幼くして労働に従事し、けがを負う。
それでも、彼女は生きることを肯定し続ける。
その姿は、希死念慮に揺れるロイと対比されるとき、少々うんざりするけれど、やはり美しく映る。
この生と死の葛藤もまた、生命の姿なのだ。
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