「"落下の王国"=映画」落下の王国 4Kデジタルリマスター ありきたりな女さんの映画レビュー(感想・評価)
"落下の王国"=映画
【通常版レビューより再掲】
前情報で聞いていてもやはり景色の美しさ、衣装の独特な雰囲気と色づかい、度肝を抜かれた。世界にはこんな「世界」が実在するんだと思わず(感嘆の)ため息が止まらない。
そもそもベートーヴェンの第七番をBGMに、突如重厚な幕開けを見せる白黒のオープニング…今思えばあれはロイの人生最悪の瞬間であり、分岐点であったわけで。
それなのに、客観的に見る分には信じられないほど美しい…という残酷さ。他人の人生なんてそんなものなのかもしれない、とすら思う哀しさも、圧倒的な美が打ち消す、いや打ち負かすような一瞬。
しかし、敢えてそれらのことには触れず、私が一番印象に残ったのはラストシーンである。
この映画って、つまるところ映画に対する愛を伝えたかったのかなと。
最後に沢山無声映画が引用されていたけど、初期映画は技術的に出来ることが少ない中、"落下"という動作は目に見えて解り易いから、多用されていたのだろうと思う。
そして、この映画自体が映画における"落下"を担うスタントマンが語る物語であり、全て合成ではなく原始的にロケで撮っているわけで、語り手と構成自体が初期映画をなぞっているような。
どうしても宣伝などで触れられがちなビジュアル面の拘りが、その美しさゆえだけでなくて、初期映画に対するオマージュとして出発しているのなら面白いし、心から素晴らしいと思った。
まさに「嘘から出たまこと」の如く生まれたこの映画そのものと、映画に人生を変えられながらもまた映画に救われたロイが、フィクション=映画を作ることに再び戻っていく結末、圧倒的希望でしかないし、
文字通り落下してゆく数々の登場人物たちと先人たちによって創られた、スクリーン内外の幾多の"王国"を目にできる幸福を噛みしめる。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
