「稀代の映画評論家佐藤忠男」佐藤忠男、映画の旅 飛ぶトリさんの映画レビュー(感想・評価)
稀代の映画評論家佐藤忠男
佐藤忠男氏は間違いなく評伝としてきちんと記録に残すべき稀代の映画評論家であったと映画『佐藤忠男、映画の旅』を観て強く感じたしだい。
晩年の氏と繋がりのあった国内外の映画関係者へのインタビュー、並行して佐藤氏のベスト作品だというインド映画『魔法使いのおじいさん』のスタッフたちの逸話などで構成される。
映画を好きになった経緯も興味深く、また奥方と共にアジア映画への探訪、映画祭監督としての氏の情熱にも胸をうたれる。アジア各国の良作を福岡で上映し、作品を保存してまた世界に向けて再上映するという。映画評論だけでなく映画祭を通して沢山の映画人を助けてもいたわけである。
「悪く書く評論家もいたけど佐藤忠男さんは紙面で褒めてくれた」生前そのようなことを嬉しそうにで話してくれたのはNHKの佐々木昭一郎さん。直接聞いた話である。
個人的な話だがその昔、ある劇場公開作品のチケットを新百合ヶ丘駅で氏と奥方が何十枚もその場で買ってくれた。これは今でも本当に感謝している。
映画人には甘かったようだが反骨精神は強かったようで一本筋の通ったところが氏の魅力なのだろう。『魔法使いのおじいさん』は観たことはないがインドのその土地のフォークロアや精霊のようなものを題材にしているらしい。どこか人間の原点ともいうべき本質的な人として最も大切なものが描かれているようで、やはりこのような作品をベストに選ぶところに映画評論家佐藤忠男の映画観、人生感があったに違いない。
上映後サプライズで寺崎監督の挨拶があった。90歳を過ぎても執筆の意欲は衰えなかったという。その後ロビーに監督がいてくれたのに感想の一言も伝えず大変失礼してしまったことをどうか許されたい。貴重な作品を作ってくれたことに感謝。
紀伊國屋書店5階にて『佐藤忠男 映画の旅』ブックフェア開催中。
『映画に魅せられて』を購入。しばし佐藤忠男の世界に浸かります。

