劇場公開日 2025年12月5日

「歴史の1ページを見る」手に魂を込め、歩いてみれば 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 歴史の1ページを見る

2025年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

先日観た『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』がイスラエル側の視点から今般のイスラエル対ガザ紛争を描いていたのに対し、本作はガザ側の視点に立ったドキュメンタリーでした。イラン人のセピデ・ファルシ監督が、ガザ在住の24歳のフォトジャーナリストであるファトマ・ハッスーナにテレビ電話でインタビューしながら、戦時下のガザの様子を伝えていく構成で、2023年10月に始まり現在も続く紛争の実態を、2024年4月から1年間にわたる2人の対話を通して克明に描き出していました。

日々イスラエルの攻撃に晒されながらも、ガザの現状を記録し続けたファトマのレポートは、まさに歴史そのもの。その報告は胸を締めつける内容ばかりで、観ていても聞いていても涙を誘うと同時に、イスラエルへの怒りが改めて込み上げて来ました。特に「ネタニヤフ調書」によれば、イスラエル側が戦争継続に拘る理由はネタニヤフ首相の汚職に関する裁判を中断し、自らが牢獄に繋がれることを避けるためのものであると聞いているだけに、改めてネタニヤフ首相に対する怒りが込み上げて来ました。
時間の経過とともに通信状況も悪化し、最後に彼女は家族とともにイスラエル軍に殺されてしまうという結末には、悲しみ以上に無力感に襲われてしまいました。

「ネタニヤフ調書」と併せて観るべき作品であり、紛争の両側面がより鮮明に理解できる作品でした。

そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。

鶏